沖縄いきました(後編)
はい、というわけで2日目の続き!
平和祈念公園から車を約2時間走らせ、やってきたのは美ら海水族館!
東京に住んでいても名前だけは聞いたことがある沖縄スポットNo.1。
沖縄来たからにはここは抑えておきたかった。ええ、ミーハー丸出しですよ。
ここで撮影した空があまりにも神秘的だった。
館内の様子を、まずは写真を中心に紹介。
水族館に入館してまず目に入ったのは『浅瀬の生き物に触れるコーナー』
浅い水槽にいるヒトデやらナマコやらと直に触れ合える貴重なコーナー。
ブログのネタ的にも、ここは触っときたいよね★
触りれませんでした。
大人になるとなんで生物を触ることにこんなに抵抗が生まれるのか。
ガキの頃はアホほどセミやらバッタやら乱獲していたというのに。
数分葛藤したが結局水槽内の水を軽く触っただけでこのコーナーは終了。
2~3歳くらいの子がお父さんに手を引かれヒトデに触れて「キャッキャ」と喜んでいる姿を見て、何もかも敗北していると思った。
続いて珊瑚のコーナー
珊瑚って植物じゃなかったのね…。
卵を産んで増やすことも、自分のクローンを増やすことも可能なんですって!
人類がこの先生きのこる鍵は珊瑚が鍵を握っているのではないでしょうか。
珊瑚礁に済む危険生物シリーズ
毒により人の死亡例があるハブクラゲ(触手なっが)
美しいけど尾びれに鋭いトゲを持つナンヨウハギ
刺さると激しく傷む毒を持つシマヒメヤマノカミとゴンズイ
説明見るだけで恐ろしい恐ろしい。
多種多様な珊瑚礁たち
男子の憧れ、甲殻類最強のヤシガニ
挟む力は体重の90倍!人間に例えるとカボチャやヤシの実程度なら片手で粉砕できる握力。
みんな大好きサメちゃんのコーナー
様々なサメの歯の標本が展示されている。
最も凶悪そうな歯に直接触ると「ああ、こりゃ噛まれたら死ぬわ…」って思った。でも鮫は人間を食うために襲うのではなく得体の知れない生き物が現れると「なんやこいつ、食えるんかな?」とつい試し噛みしちゃう性質があるそうで、その試し噛みの威力が高すぎるので人間には致命傷になっちゃうんだって。
サメの歯は永久に生え替わるのは有名な話だが、標本で見るとその構造がよく解る。内側の歯茎からエスカレーターのようにせり上がってくるらしい。
それにしても、なんで人間の歯は1度しか生え替わらないんでしょうか…サメより確実に虫歯になりやすいもん食ってますよね。
いずれは人類も永久に生え替わるよう進化して欲しいものです。
ついでに牛も見習って胃が4つになればどんな食べ物でも消化出来そうだし、そうなれば攻守共に最強(?)なのに。
…なんか話題がそれましたね(笑)
巨大な古代サメ『メガロドン』(ウルトラマンの怪獣かよ)の歯!
大人がまるまる収まるとてつもない大きさ。
替え歯もエグい数が揃ってる。
他にも色んなコーナーが有りますが、全部紹介してるとキリがないので
撮影した映像を編集し、自作曲をつけてみました。
youtu.be水族館の雰囲気が少しでも伝われば良いなぁ。
全国色んな水族館に行ったことがありますが、さすがに展示数もサイズも情報量もダントツですね。
あまりにも有名なので今更ここで宣伝する必要はないかと思いますが、とても良いところだったので初めて沖縄行く方は是非行ってみてください。
水族館を出てあまりに喉が渇いたので買った『琉球コーラ』
特にコメントが見つからない普通のコーラ。
次に向かったのは水族館から車で50分ほど走ったところにある古宇利島のハートロック。
浜辺にある2つの岩が丁度良く組み合わさると、ハート型に見えるので有名な観光スポット。
西に傾いた太陽が綺麗。
位置を変えれば逆ハートにもなる。
駐車場で『はち』がリラックスしてた。
ここまででレンタカー返却時間も迫っていたので那覇市に帰還。
道が混んでて20分くらい延滞してしまった…。
昼飯を抜いたのでとても腹が減っていた。
沖縄旅行最後の晩餐は決めている。
沖縄二大有名肉『あぐー豚』と『石垣牛』
その両方を叶えてくれたお店が国際通り沿いの『ごりらパンチ』というお店。
あぐー豚、石垣牛のステーキが同時に存在する欲張りセット。
塩だれ、ステーキソース、醤油、胡椒、塩と5種類の調味料があり、どの組み合わせが一番旨いのか試したところ、結局豚は塩だれ、牛はソースが一番だった。
あぐー豚は口の中で存在感が凄く、ざくざく切れるような食感。
一方石垣牛は肉汁が甘く、とろけるような食感。
対照的な二種の肉を同時に味わえて大満足した僕はホテルに戻る。
次の日は10時15分発の飛行機で福岡に向かう予定だが、僕はまだ沖縄でやりのこしたことがあった。
これまたベッタベタなスポット、首里城観光である。
せめて外観だけでも拝みたい。あわよくば開門式というのを見てみたい。
時間とルートを調べ上げ、搭乗時間の1時間前にはゆいレール那覇空港駅に到着することを目標に、時間の許す限り首里城へ向かうことを決意。起床予定時間は6時半。
寝過ごした☆
7時半起床で1時間のロス…あたしって、ほんとバカ。
それでもまだギリギリ何とかなると思っていた僕は、急いで荷物をまとめてホテルを出る。
空港とは逆方向でしかも両端の駅というのが焦りを加速させる。
8時20分頃首里駅に到着したものの、首里城までは駅から徒歩10分強。
一応首里城に向かいつつ、脳内で逆算してみる。
9時15分には那覇空港駅につきたい
首里駅から那覇空港駅までの所要時間は約30分
首里駅から首里城まで往復約20分
つまり、現在の時刻的にはまだギリ間に合うって事だ。
いける、いけるぞ俺!諦めたらそこで試合終了ですよ!
信号待ち長い!
道に迷った!!
公園めっちゃ広い!!!
無理だ…
諦めよう!!!!
試 合 終 了 !!!!!
気分的には完全敗北ですわ。
せめてもの抵抗と言うことで案内図と首里駅にいたという証拠写真だけ撮っとく。
…というわけで最後はバタバタグダグダな感じで初の沖縄旅行は終了した。
全体的に駆け足気味な旅行だったが、その魅力は充分に伝わった。
現地でしか味わえない経験をすることが目標だったのだが、日射しの強さで肌に発疹が出来るなんて経験はまさに現地でしか味わえない事なので貴重な体験だった。
しかし沖縄を堪能するには滞在時間があまりにも短すぎた。
また行く機会があれば今度は1週間ぐらい滞在して本島以外の島にも行ってみたい。
沖縄旅行編、終わり!
沖縄いきました(中編)
沖縄旅行記2日目!
今日は1日フリーなので、1人気ままに沖縄観光を楽しもうと決めていた。
朝一でレンタカーを借り、元々行こうと決めていたところや、後輩から聞いたオススメスポットを合わせておおまかなルートを決め、1日中探索し尽くす計画。
レンタカー屋の開店時間前に、ファミリーマートで朝食を購入し、イートイン。
サンドおむすびのスパイシーチキン(チーズ)味と朝すば
どちらも沖縄限定商品。朝すばは沖縄そばの小さなカップ麺で、朝食べやすいあっさりとした味付け。
そして今日のドライブのお供、三ツ矢サイダーやんばるパイン
パインは果物の中でも比較的好きな部類なので、グビグビ飲める。
朝食を終えてレンタカーを借り、まず向かったのは沖縄本島の南西端・喜屋武岬。
観光客は自分以外おらず、心ゆくまで自然の雄大さを五感で味わえた。
日射しが強いおかげかあらゆる物が色鮮やかに写り、見た目だけで『生命力の強さ』を感じ、薄青く透き通る海から聞こえる潮騒、吹き抜ける風が運ぶ磯の香りが心を穏やかな気分にさせてくれる。
世の果てで混じる空と海の境が視界いっぱいに広がり、人工物に囲まれた普段の暮らしではなかなか感じられない『地球の広大さ』を改めて認識し、妙な感動を覚えた。
ここらで写真集をどうぞ。
あっ…(察し)
続いてやってきたのは次の目的地へ向かう途中で通りがかった具志川城跡。
再び写真集。
ここでも自分以外誰もおらず、この広い世界に自分だけが取り残されたような錯覚を覚える。
こういう『過去』を感じる場所というのは自分がそこにいた記憶は無いのに妙な哀愁を感じるのは何故だろう。
車を20分程走らせ、次に来たのはひめゆりの塔。
ここは今回の旅で最も衝撃を受けた。
簡単に説明すると第二次大戦末期に起こった沖縄戦で看護要員として集められた沖縄の女学生達を慰霊し、当時の記録を資料館として残した場所だが、前途有望だったはずの少女達を数ヶ月に渡って振り回し尽くした戦争の悲しみ、理不尽さ、残酷さを骨身に沁みて感じる。
活動中よりも解散命令後の方が圧倒的に死者数が多いという歯がゆさ。わずか一週間で136名が死亡した。
この薄暗い洞穴で何ヶ月も身を寄せ合い生活していた。
こちらが平和祈念資料館。
資料館内部は撮影禁止だったので写真はないが、うら若き乙女達に降りかかった地獄の体験を手記や当時の持ち物、映像資料や生存者のインタビューなどで学ぶことが出来る。
あるフロアでは入った瞬間度肝を抜かれて鳥肌が立ち、無残に戦死した少女達のやるせない想いが胸に痛いほど刺さる。どんな場所なのか気になった人は実際に行って確かめてください。
薄暗い館内を出てまぶしい陽光の下に出たとき「平穏無事に暮らせているだけでなんとありがたいことか」と先人達が血の滲む努力で作り上げた平和な世の中に感謝し、それを我々は守り続けていくべきと感じた。
ちょっとセンチな気分で駐車場に戻る途中、土産物屋のおばちゃんに手招きされ思いがけず入店してしまう。
普段はそういった誘いには乗らないんですが感傷の隙を突かれてしまった。
「このブレスレットに使われているターコイズはねぇ、全部本物の職人の手作りだからここでしか買えないの。通常10000円のところ特別価格3000円でいいよ♡」
なんて売り文句で延々と僕に誘いかけるおばちゃん。
ジャ◯ネットも尻尾を巻いて逃げ出すレベルの価格破壊が起きていますが、あいにく僕は宝石にも腕輪にも興味がないので「いや、安くなりすぎでしょ(笑)」なんて突っ込みつつ冷やかしだけで済ませようと思っていたんですが、商品を手に取る度に「それは2000円」「それは1000円」とあらゆる品が表示価格より50%以上の値引きが入り、もはや定価の定義を協議しなければならない事態に陥りそう。
悩んだ末、満面の笑みでピースサインしてるシーサーの置物を800円で購入。
シーサーはどっかで買うつもりだったので、まあ良いでしょう。
シーサーを袋に入れられるのを見届けていると、対応中のおばちゃんとは別のおばちゃんが声をかけてきました。
「お兄ちゃんさあ、彼女とかおらんの?」
「ああ、まあ、いますけど…」
「じゃあなんかプレゼントも買ってやんなよ!安くしとくからさ!」
「え、えぇ~そ~ぅですねぇ~(商売上手め…)」
悩んだあげく、派手すぎない装飾のネックレスを定価(笑)8000円の所2000円で購入。
先日の市場といい、沖縄の人は本当に商売上手だよなぁと思う。
朗らかな笑顔で声をかけ、儲けが心配になるレベルの値下げをし、こちらも観光で来ているから財布も気持ちの紐も緩みがち、なにより暑いからか本当に欲しいものなのかどうかの判断を正常に下す前に気づいたら買っちゃう。
沖縄…恐ろしい子……!
ちなみに国際通りの土産物屋で同じ品の価格を確認すると、シーサーは1700円くらい、ネックレスは3000円くらい。初期価格設定強気すぎ。
続いてやって参りましたのは平和祈念公園。
園内で購入したさとうきびアイス。
撮ってるそばからもう溶け始めてるのが炎天下ぶりを物語る。
写真集再び。
時間の都合で資料館内には入らず…。
資料館前の広場で修学旅行生が弁当食ってたんですが、みんな可愛らしいお弁当箱で昼食をとる中、1人だけセブンイレブンのミートソーススパゲッティむさぼってるのを見て、強く生きて欲しいと思った。(あるいは既に強いのかも知れない)
沖縄平和記念堂
こちらも時間の都合で(ry
ひらりひらーりとまーいあそーぶよーに♪
色鮮やかなハイビスカス。
一通り園内を歩き尽くし、次は定番中の定番、美ら海水族館へ向かうのですが思いの外ボリューミーな記事になったので今回はここまで。後編へ続くのじゃ。
沖縄いきました(前編)
長期旅行ネタいきまーす。
6月6日~8日の3日間、沖縄に行って参りました。
人々を魅了してやまない場所、南国沖縄。
生まれて初めて訪れたこの地で体験した出来事をつらつらと書き綴っていきますよ。
6月6日の12時15分、福岡空港から飛行機で1時間45分かかって辿り着いた沖縄の空は、雲間に青空が射し込む、程良い気候だった。
梅雨ど真ん中にも関わらず、空気はカラッとしている。「沖縄の人に陽気でラフなイメージがあるのは空気が軽いからなのか?」そんなことを思ったり思わなかったりしつつ、とりあえず空腹を満たすため空港内の飲食コーナーへ向かう。
旅行中は出来るだけ名物が食べたいと思っていたので、ソーキそばを注文。
沖縄そばと何が違うのか調べてみると、『ソーキ』とは豚の骨付きあばら肉のことをさし(wikiより)、『沖縄そばは乗せるトッピングによって名称を変える料理である』ということをその時始めて知った。
あっさり塩味の豚骨スープと噛む度ぼそぼそ切れる独特の太麺、肉汁があふれ出すソーキやその他のトッピングで胃を満たした僕は、予約したホテルのある国際通りを目指して、ゆいレールに乗る。
沖縄で電車の類いはコレしかないらしい。しかもその距離は那覇空港から首里城まで。沖縄本土の1/20にも満たないとても短い距離。似たような範囲のいたるところに地下鉄という網を張り巡らせている東京とは大違いだ。
乗っているとき、遠くの方で自衛隊が射撃訓練をしているのが見えた。
土産物屋や飲食店が建ち並ぶ通りを20分程度歩いて宿泊するビジネスホテルに到着。チェックインを済ませ一時の城の床に大荷物を降ろすと、フロントの自販機で買った沖縄っぽい飲み物で一息つくことに。
僕は柑橘系は苦手で普段はまず飲まないのだが『旅行中はなるべく名物を食べる』事をモットーとしている。食わず嫌いでいた物を好きになれるかも知れないし。
飲んでみると柑橘特有の酸味はさほど感じられず、程良い甘酸っぱさが喉を潤し、さわやかな風味が鼻を抜けていった。
今日は沖縄在住の知人に会う予定だったので、荷物の整理もそこそこに一旦ホテルを出る。その知人は専門学生時代の後輩で、後輩達の中でも特に交流が深かった内の1人だった。自分は卒業後はすぐ東京に引っ越してしまったし、彼も沖縄に戻ってしまったということで実に6年3ヶ月振りの再開に胸を躍らせていた。
後輩は、心身共にたくましく成長していた。
学生時代は細身で小柄な少年といった印象だったが、メガネの奥の笑顔が素敵な好青年になっていた。
6年間の積もる話もそこそこに国際通り沿いの大規模な魚市場に案内され、島らっきょうを試食したり、色とりどりの魚介類に目を奪われていた。
本当に宝石かと思うほど美しい。
そしておばちゃん達の客引きが凄い。キャバクラの客引きよりグイグイ来る。
それを軽くあしらっていく後輩がいてくれて助かりました。
僕1人だったら後5日くらい旅行の日程残してるのに1匹くらい買っていたかもしれません。
魚市場の2階にはフードコートが広がっており、買った魚を調理してくれる食堂や、沖縄スイーツを販売していたり、お土産屋があった。
いくつかあるお店の沖縄そばの値段が、いずれも500円~600円代で抑えられているのが気になり、僕は後輩に訪ねた。
自分「ずいぶん安いんだね」
後輩「こんなもんですよ?」
自分「俺、空港でソーキそばを1200円で食べたんだけど」
後輩「ああ、ぼられてますねそれ(笑)」
ボーラーレータwwwwwwオーコワイwww(コワイコワイw)
ヤーラーレータwwwwwwオオオーwww(コワイw)
メガネでメタボでダンスがキレッキレな芸人を思い浮かべたあなたは、ぼったくり店に行く権利を進呈します。
…まあこの経験も旅の思い出として、そっと胸の奥にしまうことにしましょう。
スイーツ屋に入り、黒糖ミルクとサーターアンダギーを注文。
シークヮーサージュースも良いけど、僕はこういう『露骨に甘い味』が好きだと黒糖ミルクを飲んで改めて思った。
揚げたてのサーターアンダギーは熱くて厚くて食べ応え抜群でした。晩飯前にも関わらず2個食べてしまいお腹が心配になりましたが、なるべくカロリーを消費するために沖縄の街をお散歩デートします。
商店街にはいとをかしなシーサーの置物や…
小さい子供なら号泣失禁必至なお面
ふらりと立ち寄ったゲームコーナーでは5鍵が哀愁を漂わせていた
(店内禁酒ってのがミソよね)
小高い丘を登った先の広場には立派なガジュマルの木
木の近くに巨大な綱が展示されており、なんでも那覇市民が西(みーんな)、東(をぅーんな)に別れて大通りで綱引きをするお祭り『那覇大綱挽』で使用されている物らしく、1995年には世界一の大綱としてギネス認定もされているすんごい綱なんだそうな。
サイズ比較として後輩君に立って貰いました。
神龍の尻尾かな?
サーターアンダギーも良い感じに消化できたし、そろそろ晩飯にしようかと夕暮れの国際通りを彷徨っていたところ、「沖縄グルメと沖縄民謡ライブが楽しめる居酒屋」のお兄ちゃんから勧誘され、普段ならそういった誘いは拒否する事が多い自分だけど今回は『現地グルメはなるべく食べる』目的でいたし、さらにライブまで楽しめるなんていかにも『旅先』って感じがするということでホイホイとついていった。
ここからは沖縄グルメづくし!
もずく、海ブドウ、ジーマーミ豆腐
ド定番・ゴーヤチャンプルー
ナーベーラー
どれも美味しかったけど、初めて食べたジーマーミ豆腐が特に気に入った!
濃厚な豆腐のなめらかな食感と甘辛いタレが絡み合い、ほのかに残るピーナッツの風味。
後輩も好きな料理らしく、とても良い品を教えて貰えた事に感謝。
しかし出された料理をほぼ食べ終えても、肝心のライブが始まる気配を見せない。開始時刻は19時からだったはずなのに、とうに30分以上は過ぎている。
スタッフからのアナウンスは無いどころか、平然としている。他のお客さんも同様だ。
これは僕が従来の価値観を捨てるべきなのかな?と思った瞬間だった。
やがて三線をかまえた男性と鼓を持った女性の2人組がステージに登場し、沖縄民謡を有名どころから地元でおなじみの曲まで1時間あまり演奏。
最後はお客さん全員立ち上がって合いの手をうったり、知らない人同士でもほんわか仲良くなれるとても心地良い空間が出来上がっていた。
やはり演奏時間の遅延なんて些細な問題だった。
忙しい生活をしていると、この心の余裕をつい忘れがちだ。
シーサー君も良い笑顔。ピカーーー!!
良い気分で後輩とグッバイし、コンビニで紫いもタルトアイスを購入してホテルに戻る。
自室の扉が全開になっていた。
泥棒に入られたかなと焦り、盗られた荷物が無いか急いで調べる。
………良かった。とりあえず手荷物に変化は無さそうだ。
フロントに連絡すると「清掃後に閉め忘れたかも知れない」という素敵な回答が返ってきた。
なんとも沖縄らしい(?)ゆるいエピソードではないか。何も盗られてないし、大目に見ようでは無いか。
さて、1日歩きまわって汗もかいたし、シャワーを浴びてさっぱりしよう。
ユニットバスのトイレの上の荷台に用意されている純白のバスタオルを手に取ったとき、僕は戦慄した。
タオルの奥の壁で楕円形の黒い光沢が蠢くのが見えたからだ。
泥棒はいなかったけど、もっとも入られたくないヤツに不法侵入されてるじゃねぇか。
速攻でバスタオルを元に戻し、逆再生のように後ずさりしてユニットバスのドアをそっと閉める。
開かずの扉が誕生した。
フロントに通報連絡し、気分転換に本当は風呂上がりに食べようと思っていた紫いもタルトアイスを食べ、さて小説でも書くかーと機材を出したものの、お酒を飲んでいたせいか寝落ちしてそのまま爆睡してしまった。
(僕は凄まじくアルコールに弱い)
ちなみにこのアイス、後日東京のスーパーで普通に売っているのを見かけて複雑な気持ちになった。
こんな感じで1日目は終了。
開かずの間となったユニットバス、果たしてどうなってしまうのか!?
(後半へ続く)
妄想ロマンスポルノ'18 〜人工呼吸〜
しまなみロマンスポルノ'18 ~Deep Breath~開催まで後1ヶ月!
ということで、
僕の希望的妄想も結構入っていますが、
何曲当たるかわかりませんが、
ちなみに記事の前半はライブの傾向の考察、後半がセトリ予想となっております。
セトリだけ読みたい方は前半は適当に流し見してください。
事前情報
・ポルノグラフィティ20周年に向けたキックオフライブ
・ロマポル初の出身地広島での開催
・ライブの収益を7月の豪雨災害復興の支援金として全額寄付(マジエネル)
過去のライブとの関係性
・10年目の時もキックオフライブとして横浜と淡路で開催
・14時開演はつま恋ロマンスポルノ'11 ~ポルノ丸~と同じ
・ポルノ丸の時は東日本大震災後の開催で、 復興支援の要素を含めている点が共通
・ライブタイトル由来のシングルは必ず本編ラストを飾り、 収録曲は全て演奏
ありがちなこと
・Before Centuryから違う曲
・アコースティックアレンジ
・ENCORE1曲目が未発表新曲
・ジレンマ後に2人だけで演奏
・メドレー
曲数とそのバランスについて
・近年減少傾向にあり、シングルの比重が大きくなっている
恐らくALL TIME SINGLESから入ってきたファンに配慮していたと考えられる
過去開催されたロマンスポルノの比率表
横浜ロマンスポルノ'06
・シングル12曲(46%)、カップリング6曲、アルバム7曲、
横浜・淡路ロマンスポルノ'08
・シングル13曲(52%)、カップリング3曲、
東京ロマンスポルノ'09
・シングル19曲(54%)、カップリング7曲、
つま恋ロマンスポルノ'11
・シングル12曲(48%)、カップリング5曲、
幕張ロマンスポルノ'11
・シングル11曲(45%)、カップリング7曲、
横浜ロマンスポルノ'14
・シングル18曲(64%)(内4曲メドレー)、
横浜ロマンスポルノ'16
・シングル15曲(62%)、カップリング5曲、
新規ファンへのサービス期間は終わったのか、BUTTERFLY EFFECTではシングルの比重が下がっている(ちなみにシングル10~12曲(45~54%)、
定番シングルについて
・以下8曲の内、5曲以上は演奏される確率が非常に高い
1.アポロ
2.ミュージック・アワー
3.サウダージ
4.アゲハ蝶
5.Mugen
6.メリッサ
7.ネオメロドラマティック
8.ハネウマライダー
・・・以上の事を踏まえて、
妄想ロマンスポルノ'18 〜人工呼吸〜
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ライブナビゲーター恒例の客いじりが終わってしばらくすると、
一瞬歓声があがるも、
サブステージに着いたらさっそく7月の豪雨災害の話題。
災害やライブ開催の経緯に関する話題をしつつ、演奏準備が出来たら
1.∠RECEIVER(弾き語りVer.)
つま恋の最後の最後に演奏された曲が同じアレンジで1曲目に演奏
あの時と同じような自然災害の驚異や真偽不明な情報の洪水を前に
弾き語り後、
2人がエレキギターに持ち替えたら、
2.君は100%
つま恋の1曲目と同じなんだけど久々枠だし、∠
実はロマンスポルノでの演奏確率がかなり高いこの曲。
THE WAY、惑ワ不ノ森、ポルノ港、ポルノ丸、10イヤーズ ギフト、キャッチ ザ ハネウマと夏場~
4.メリッサ
定番1曲目。新サポメンベーシストの紹介が入る。
5.アニマロッサ
久々枠。
ステージ全体が真っ赤に染まる。
アウトロの直後に昭仁が「ありがとぅ!!」
MC わしらがー…ポルノグラフィティじゃ!
サブステージに移動しつつトーク。
イタリア語で『赤い魂』。赤と言えばあの球団。
6.みんなのカープ(アコースティックアレンジ)
広島開催でこの曲をやらない理由がない。
7.サウダージ(アコースティックアレンジ)
定番2曲目。
8.デッサン#2春光(アコースティックアレンジ)
サブステージラスト。レア枠かつ「
9.カメレオン・レンズ
最新シングルの1つ前は演奏されやすいの法則。
以下、例
THE WAY→オー!リバル
DAYS OF WONDER→ワンモアタイム
ポルノ丸→EXIT
愛と青春の日々→この胸を、愛を射よ
10イヤーズ ギフト→痛い立ち位置
キャッチ ザ ハネウマ→ジョバイロ
メインステージに戻り通常バージョンで演奏。
10.海月
カメレオン・レンズからのしっとり、
11.Before Century~THE DAY
毎度恒例の儀式だが、演奏されるのは別の曲というパターン。
儀式で盛り上がった会場の勢いを殺さず繋げる曲かつ、
MC 少年時代のエピソード
12.My80's
久々枠。昭和を思い出させるような映像が流れる。
13.青春花道
My80'sのアウトロからクロスフェードする形で始まる。
どちらも80年代を意識した曲なので相性が良いのか、
14.DON'T CALL ME CRAZY
ヘソ。つま恋以来演奏してないので確率は高い。
長くておどろおどろしいアレンジのギターソロ。
白煙が焚かれる演出。
MC 広島の観光についてトーク
15.故郷を想うメドレー
地名や広島弁を使用した曲でメドレー。
楽曲にちなんだ映像が流れる。
15ー1.Let's go to the answer(イントロ~1番サビ)
「今でも因島Dreamin'」
15ー2.Aokage(ラストサビ)
「あの急な坂登りきったら青影トンネルだ」
15ー3.邪険にしないで(イントロ~1番サビ)
「よせる波は途切れんじゃろぉし、夏にはみかんは香るじゃろぉ」
15ー4.生まれた街(Cメロ~ラストサビ)
「僕は生まれた街の中で」
15ー5.Jazz up(1番サビ~Cメロ)
「土生港から海沿いの道を」
15ー6.狼(2番Aメロ~ソロ)
「夏盛り、折古の浜」
15ー7.アポロ 広島弁Ver.(ソロ~ラストサビ)
定番3曲目。「Love・E-mail・From……
MC 最後まで盛り上がっていこう!的な話
16.オー!リバル
最近の定番。演奏確率64%。
イントロ始まりで金テープ発射
火柱演出
「オーエーオーエーオー」長めにやりそう。
17.ミュージック・アワー
定番4曲目。水を使った演出がありそう。
18.ハネウマライダー
定番5曲目。ラスサビ後に1番サビを歌わせるヤツ。
19.ブレス
ライブタイトル本編ラストの法則。
ラストの「ウォーオー…」
昭仁の「今日はホンマにありがとう」の一言の後、
ENCORE
チャチャチャ!!
MC ベストアルバムの発表とかあると嬉しいよね。
20.新曲
ENCORE1曲目は高確率で未発表の新曲になっている。
過去の『ロマンスポルノ』のENCORE1曲目を振り返ると
THE WAY→LiAR
惑ワ不ノ森→ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~
DAYS OF WONDER→ジレンマ
ポルノ港→ゆきのいろ
ポルノ丸→ネガポジ
愛と青春の日々→瞳の奥をのぞかせて
10イヤーズ ギフト→Love,too Death,too
キャッチ ザ ハネウマ→愛が呼ぶほうへ
と8公演中5公演が当時発売前の新曲を演奏している。
その確率62%。
曲調はアップテンポなデジタルロックだったら良いなぁ。
MC メンバー紹介
21.ライラ
最後死ぬほどライララライララライララライライライライライ連発させられそう。
昭仁から「いい加減にしろ!!!」って突っ込まれるまでやりそう。
22.ジレンマ
様式美ですね。最後は会場みんなで飛んで、恒例の「
と思わせてサブステージに移動して、
23.そらいろ(弾き語りVer.)
知名度はあまりないし、地味な曲かも知れないけど、
出た当時より昭仁の歌唱力が数段パワーアップしているし、
演奏後、2人は観客に何度も手を振り返したりお辞儀をしたりしながらステージ袖に退場
「本日の公演は終了しました」
終わり。
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こんな感じでしょうかね。
シングル15曲(比率51%)、アルバム7曲、
曲数は最近の傾向からすると結構ぎりぎりで、
ちなみにTHE DAYとオー!リバルで出てきた演奏確率というのは、
ここまで書いていうのもなんですが、
いやぁ~1ヶ月後が非常に楽しみです。
何曲当たるかな~?定番以外は1曲でも当たれば嬉しいなぁ。
まあ、予想外の曲が来ても嬉しいから、結局全て嬉しいんだけどね。
オリジナル小説『友達100人できるかな?』最終話
これはおじさんのオリジナル小説です。
ひとまず最終回を迎えることが出来ました。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
*前回のあらすじ*
不思議な光をまとって麻弓の前に現れたサキは、少年から授かった守人としての力でカクマが呼び出したゾンビを次々と退け、ついにカクマ自身も追い詰める。カクマを確実に封印するために、サキは一緒に祠に封印される道を選ぶ。その後、救助に来た登山グループによって目を覚ました麻弓は、サキが唯一残したくまのぬいぐるみを抱きしめ涙を流すのだった。
最終話 <友達のつくりかた>
仏壇の前に正座し、お線香を1本焚いて鐘を優しく鳴らすと、私は両手を合わせて深く祈りを込めた。今までのことや、これからのこと…心の中で、彼女と沢山会話する。
「あらあら、朝早くから熱心ねぇ…」
拝み終わって頭を上げた私の背中に、柔らかいしわがれ声がかかる。後ろを振り返ると、にこやかに微笑んでいる井川さんがいた。
「だって今日は特別な日だから…ね、サキ?」
仏壇に飾られた遺影に笑いかける。遺影の隣にはくまのぬいぐるみが飾られていて、サキのそばに寄り添うように嬉しそうな笑みを浮かべていた。持ち帰ったときはボロボロだったけど、井川さんの丁寧な洗濯と補修でずいぶん綺麗になり、明るくなった印象を受ける。
立ち上がった私はその場でくるり、とまわってみせた。スカートがふわりと舞う。
「それもわかるけど、はしゃぎすぎて遅刻しないようにね」
よくお邪魔するようになってから、井川さんはお母さんみたいなことを言う様になった。
「わかってるよー」私は子供っぽく口をとがらせる。
「でもありがとう、可愛らしい制服姿を見せに来てくれて。…あの子も、きっと喜んでいるわ…」
井川さんは目を細め、仏壇に飾られたサキの遺影を見ている。そんな様子を眺めつつ、視界の端に入った時計の針を見て、私は出かける時間が迫っていたことを知った。
「…じゃあそろそろいくから、終わったらまた来るね」
傍らに置いた学生鞄を持ち、玄関へ向かう。
「気をつけてね、麻弓ちゃん…」
玄関先で手を振る井川さんに、私も全力で手を振り返した。
山で起こった出来事が終わってから、もう4ヶ月以上が経つ。私は中学生になった。今日は4月1日、つまり入学式があるので初通学前に、井川さんとサキに制服姿を見せてから行くことにしていたのだ。
あれから色んな出来事があった。登山戦隊のおじさん達の車に乗って、ふもとの病院に行き検査した結果、幸い擦り傷や軽い打ち身だけで済んでいた。一方同じ病院で先に入院していた浅山さんは全身包帯まみれのミイラ男状態になってしまい、最初顔を見せたときは申し分けなさすぎてベッドにしがみついて泣いてしまった。でもそんな私に、浅山さんは「俺も生きてるし、君も生きてる。それで充分じゃないか」といつもの白い歯を見せてニカッと笑いかけてくれた。
面倒だった事が2つ。1つは私の失踪が大きめの誘拐事件として取り扱われていた事だ。報道番組や新聞では『初冬の山で1ヶ月!少女はどうやって生き抜いたのか』なんてタイトルで連日賑わい、家にも病院にもマスコミが取材に来たり、警察からもしつこく事情聴取を受けるハメになった。私は最初っからありのままを説明しただけなのに「冗談はいいから」と誰もまともに相手してくれない。そのくせしつこく聞いてくるもんだから、面倒になって最後の方は適当に受け答えしていた。
2つ目は母が浅山さんの事を誘拐犯だと誤解してしまった事だ。病院で最初にあったとき、ゴミを見るような目つきでミイラ姿の浅山さんを見ていて怖かったのを覚えている。完全にとばっちりを受けてしまった浅山さんは、誘拐の容疑者として危うく拘置所送りになりそうだった所を、私が必死に弁護してなんとか阻止した。その後何度か病院で顔を合わせる内にだんだんと打ち解けていったようで、今では『娘のわがままに最後まで付き合ってくれた上に、大怪我させてしまった人』としてすっかり頭が上がらなくなっている。ちなみに浅山さん本人は脅威の回復力で3月には退院し、今では仕事も登山もバリバリこなしてるみたい。
浅山さんの入院費用は、なんと全額井川さんが負担した。山で起こった事を話そうとくまのぬいぐるみを持って家にお邪魔したとき、浅山さんの話をしたら「サキのことで大変な目にあったんなら、親として責任はとらなきゃねぇ」と言っていた。詳しい金額は知らないけど、浅山さんも母もあごが外れるような金額を、なんのためらいもなく支払ったそうだ。
「老い先短い私が、お金持ってても仕方ないから」と笑う井川さんの顔は、すっきりしたような…でも、少し寂しそうな感じがしていた。
だから私は、思い切って母に相談したのだ。井川さんの家の近くに引っ越すことを。最初は断られたけど、浅山さんの入院費を支払う際に顔を会わせたのをきっかけに、母を連れて井川さんの家に遊びに行くことが増え、母に井川さんの人柄の良さや孤独が伝わったのか、小学校を卒業してすぐ後に引っ越しすることが叶った。もしかしたら母自身も仕事漬けで忙しい毎日を送っていたから、ゆっくり話せる友人が欲しかったのかも知れない。
山奥の寂れた神社は、現在は全面立ち入り禁止となっているが、霊能者や山の管理者なんかの調査が進んで、いつか改築されたらお祭りや初詣で人が賑わうような神社に生まれ変わる…かもしれない。と言っていたのは浅山さん所属の登山グループの誰かだ。もしそうなったら、カクマやサキも明るい雰囲気で楽しめるかも?…祠のお札だけは、剥がされないことを祈るしか無いけどね。
…そんな感じであっという間に過ぎた4ヶ月。夏から秋にかけての不思議な出来事に比べると平凡で退屈気味な毎日だったけど、これが平和って事なんだろうな。って思うことにしてる。
ちなみに私が引っ越したことは、小学校の同級生には誰も教えてない。あいつらってば1ヶ月失踪した上に、TVでもそこそこ報道されてしまった私を、ますます部外者扱いして腫れ物を扱うようなそっけない態度になることが増えた。とくに久しぶりに登校したときなんか私を遠巻きに眺めてひそひそ話をするような子ばかりで、とても居心地が悪かった。井川さんとか浅山さんとか年上の人で仲良くなった人は増えたけど、相変わらず私は同世代の友達を作るのが下手くそで、学校生活は不満だらけだった。
もしかしたら私は私自身の環境を変えたくて、引っ越しを提案したのかも知れない。前の小学校は中学校が隣にあって、私立を受験する子以外は、まるまる同じメンバーがそのまま同じクラスの中学生になる。実質小学7年生。ド田舎だから同じ地区に別の学校は無いので、よその学校の子が入ってくるには、私みたいに転校してくるしか可能性が無い。つまりあそこで中学生になってたら、後3年は気まずい思いをしなければいけなかった。
引っ越した場所は前いたところよりは数段栄えていて、若い子の数も多い。これから通うことになる中学校は、同じ地区にある3つの小学校の子が一緒くたなるので、前の小学校の全校生徒の数を、1つの学年だけで上回るほど大規模な物になる。これだけ人がいれば、友達になれる子もきっといるだろう。そんな淡い期待を胸に、中学校の門をくぐった。
下駄箱置き場前に掲示されていたクラス表を見て、私の名前を探す。…1年B組、出席番号13番か。事前に貰った校内地図と先生達の案内を頼りに教室へ向かう。
中学校って何もかもが大きく感じられる。廊下、窓ガラス、扉…天井もずいぶん高い。前の小学校が小さくてみすぼらしすぎたせいかもしれないけど、歩いているだけでなんだか気持ちが昂ぶってくる。ここにいる人たちは、みんな初対面だ。今度こそ仲良くなれると良いな…。そう考えている内に、1年B組の教室前まで来た。開けっ放しになっている扉を通り、中に入ると既に15人くらいの同級生が席に着いていた。既にグループを作って話をしている子もいる。そんな人たちを横目に、私は窓側から2列目の最後方の席に座る。机の端に置かれた、自分の名前が書かれた花付きの名札を制服の左胸につけた。
3つの学校が一緒になっているとはいえ、殆どの子には前の学校からの知り合いがいるのは当たり前なんだけど、その光景を見て一気に不安感が高まる。もしかしたら、またはみ出し者にされるかも知れない。疑い始めたらもう駄目だ。私は眉間にしわを寄せて、渡されたプリントを無駄にじっくり読み込むか、教室の装飾をぼんやり眺める事しか出来なくなる。
これじゃ駄目なのはわかってるのに、誰かに話しかけたいし、話しかけて欲しい。なのに、体が動いてくれない。このままじゃまた楽しくない学校生活になっちゃう。なんとかしなきゃってわかっているのに、いざ同級生を前にするとつい緊張しちゃってどうしても声が出ない。
(ああ、私は駄目だな…。環境を変えても結局一緒じゃん…)
色んな事を諦めて机につっぷしようとしていたその時、教室に入って私の隣…窓側の最後方に座った女の子に、思わず目を奪われた。
小柄で華奢なその子は、窓の向こうが見えそうなくらい透明感がある色素の薄い肌をしていて、前髪が鼻の頭くらいまで無造作に垂れ下がり、髪の間から覗く大きな瞳がまっすぐ前を見ている。小さな口は真一文字に結ばれていて、まさに絵に描いたような無表情。高級な人形みたいで感情が一切読み取れない。でもかなり可愛い子だ。
……その外見に、私は見覚えがあった。
「…………サキ?」
思わず声に出してしまった。そうなってしまうほど、その子の見た目はサキにとてもよく似ている。自分の方を見て間抜け面してる私に気づいたのか、女の子も私の方を見た。
「ねえ、サキなんでしょ?」
私はそのまま話しかける。生まれ変わったのか、あるいは今までのことは夢で、あの子は公園で出会った時からずっと生きていて、案外地元の学校に普通に通っていた唯の子供だったのかもしれない。そんな根拠の無い想像を膨らませていると、女の子は首をかしげた。
「誰と勘違いしているのか知らないけど…私はそんな名前じゃないわ。川崎美帆っていうの」
……………そりゃそうだよね。サキが同じ学校にいるなんて、そんなわけないよ。
「あ…ああ、ごめんなさい。ちょっと前によく似た子と遊んだもんだから、ダブっちゃって…」
冷静になった私は、なんだかとても恥ずかしくなって、ボソボソと俯きがちに答える。
「そう…ずいぶん仲良しだったのね。あなたはなんていう名前?」
「篠原麻弓…です…」
「そう、よろしくね」
にこやかに笑いかける美帆に、ぎこちない笑顔で答える。沈黙が2人を包み、気まずい空気に耐えられなくなって前だけを見ることにした。せっかく友達を作るチャンスなのに、ふいにするのか、私の馬鹿。
「…麻弓ちゃんってさあ」
黒板を睨む私に、美帆が話しかけてきた。おどおどと目線だけをそちらへ向ける。
「普通にしてれば可愛いのに、なんでそんな怖い顔してるの?」
「そ…そうかな?」目が泳いだ。
「気づいてないの?話してるときは問題ないんだけど、1人で黙ってるとき凄い顔してるよ。最初に声かけられてなかったら、怖くて私からは絶対無理だったよ」
そう言いながらはにかむ美帆を見て、私はやっと気づいた。今までのクラスメイト達は、私が無自覚に発する負のオーラに近付けずにいたんだ。誰も私と関わりを持とうとしてくれないって勝手に嫌な気分になっていたけど、遠ざけていたのは他でもない私自身だったんだ。今更気づくなんて…本当に馬鹿。
私が美帆をサキと見間違えて無意識に声をかけてなければ、自分の顔について気づくことも無く、孤独な学生生活をまた送るハメになっていただろう………サキがあの世から応援してくれている。そんな気がした。
「ねえ、うちどの辺なの?」美帆が明るい口調で私に話しかけてくる。
「商店街の向こう。歩いて15分くらい」私は商店街の方を指さしながら答える。
「ホント?私の家もそっちなんだ!」
……嬉しそうに満面の笑みを浮かべる美帆は、よく見たらサキとは全然似ていなかった。
「よ、良かったらさ…放課後、遊ばない?」勇気を振り絞って誘ってみる。
「全然いいよ!」……やっぱり違うなー、サキはこんなにキラキラとした笑い方はしない。
でも最後の最後で、あの子は美帆と巡り合わせてくれた。
これからは自分の良くないところにも気をつけて、色んな人に声をかけるし、声かけられるよう頑張らなきゃ。そしていずれは友達100人…いや、サキの分も含めて、出来るだけいっぱい作りたいな。
ーENDー
ーーーあとがきーーー
5月から連載していたオリジナル小説。『友達100人できるかな?』
無事完結させることができました。如何だったでしょうか?
今回の作品ですが、元々はネット掲示板のオカルト体験スレにありそうな短くて後味の悪い短文で済ませるだけの物だったんです。
なので序盤は割とノリで書いてたというか、オカルト要素を適当に散りばめるだけで「ホラーっぽい」雰囲気が出てればいいやくらいの感覚でしかなかったんです。それに少しづづ肉がついていき、気がついたら中編クラスの小説になってしまいました。ここまで大掛かりなことになるとは思わなかった。
僕は今まで一本の作品を書き上げたことはありません。やりたい気持ちもアイデアもたくさんあったんですが、飽きっぽくて最後まで続いた試しがありません。
そんな自分を戒めるためにも、今回は毎週水曜日という締め切りを決めて、最後までやり抜くという目標で書き続けてきました。(何度かやぶっちまいましたが…)
書いていくうちに、色々と反省すべきところが見えました。設定の荒さだったり、キャラのブレ、なにより表現方法が枯渇して自分の引き出しの少なさ、想像力の足りなさに嫌になることもありました。
あと、ミステリーホラーと銘打っておきながら最終的にはファンタジックな勧善懲悪モノになってしまったのも反省点。特撮や少年漫画のような、正義と悪が明確に別れた作品が好きな自分の趣味があふれ出てしまいましたね。
出来るだけ便利アイテムやご都合展開はしたくなかったのですが、主人公を小学生の女の子にしてしまったがために、一人では確実に解決不可能な超常現象を解決させるための苦肉の策として出してしまいました。
ボツにした展開としてはサキの代わりに真弓がカクマの操り人形となり、永遠に山を彷徨うというオチも考えていたんですが、個人的に後味の悪い作品は嫌いなので、読後感が気分よく、前向きに進むような終わり方にしようと務めました。
とにかく一本書き上げたことで自信にもつながりましたし、次はもっといいものが書けるようになりたいと次に向けてのモチベーションは高まっています。
ひとまずは表現方法の引き出しを広げるためにもっと色々な作品に触れようと思います。
書きたいネタはまだまだあるのでまたいつかここで発表できる日が来るよう、頑張っていきたいと思います。
最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
これからも、どうぞよろしくおねがいします。
早朝のうめき声
久々に長期旅行の話をします。
ホントは行ったすぐ後に書くのがネタの鮮度としては良いんでしょ
ということで、今回書くのは6月4日の出来事。
長期旅行の途中だった僕は、
その日、
こんなに力を込めてるのに、的まで届かない。
届かせようと思って山なりに投げたら、天井のネットにあたる。
軽く投げて余裕で的を射抜く方々は、
「軸足に体重をかけて…投げるときに逆の腕をまわして…
等々のアドバイスを適所で入れてくる友人のK投手コーチ。
現地ではその全容は把握しきれなかったので、
部屋の中で解説者のフォームを真似している内に、
「今から公園行ってキャッチボールしようぜ」
と誘い、
いい歳した男3人が薄暗い公園でキャッキャウフフする様は、
(一応大きな音は立てないように配慮はしました)
フォーム指導を受けつつ、
テンションが上がったせいか距離がどんどん離
…どこからか、かすかにうめき声のような音が聞こえました。
その場にいた全員が動きを止め、お互いに怪訝な顔をします。
早朝の公園…周囲はようやく小鳥が鳴き始めたくらいで、
「え…なに今の…」Kは萎縮します。
それぞれが恐る恐るあちこち見渡していると
「あ!あそこに誰かおるで!」とYが公園の外を指さしました。
示す方向を見ると、赤い服を着た女性がうずくまっています。
こんな時間にあんな格好で、一体何があったんだろう…。
様子を見ながら「声かける?」「やだよ」
「後、つけようよ」と僕は2人に提案すると、「
「別の通りを走って、真正面に回り込むわ」
彼の背中を見送った後、僕はこう考えました。
「Yは真正面から女性を追う」
「僕たちは後ろから女性を追う」つまり
ハサミ討ちの形になるな…と
早速カメラを起動し、
そこに女性の姿はありませんでした。
念のため、僕たちは路地の先まで歩いてみることにしました。
「おった?」息を荒げてYは僕たちに尋ねます。
「全然」僕たちは首を横に振る。
「俺一応、あっちの公園(500mくらい先)
赤い服。あんなに目立つ格好をした女性を、
路地は数100メートルは余裕で見通せるそこそこ広い道。
にもかかわらず、
その後もしばらく周りの路地を手当たり次第探してみましたが、
結局諦め、
帰り道、3人で女性の正体を推理しました。
情報を整理すると
・女性がうずくまっていた時の体は、駅の方向を向いていた
・しかし、女性は駅と逆方向の住宅街へ歩き出した
・早朝
・大型のキャリーケース
・うめき声(泣き声?)
これらの要素から我々が導き出した答えは
深夜に大喧嘩したカップルがいて、女性が「もう出ていく!」
しかし、あくまで想像の域を出ませんし、
いやぁ、早朝の公園って奇妙なことが起こりますねぇ………。
オリジナル小説『友達100人できるかな?』第10話
これはおじさんのオリジナル小説です。
毎週水曜日の21時更新を予定しておりますので、暇つぶしに良かったら
見てってくださいまし。
*前回のあらすじ*
サキを解放して怒るカクマから逃れるため、麻弓とサキは2人で小屋の中に入った。そこでサキが自分の過去とカクマを封印する作戦を話し、薄い望みに賭けて小屋を出ようとしたとき、サキの体がバラバラに崩れてしまう。1人カクマと対峙する麻弓に、彼が呼び出した配下のゾンビが襲いかかろうとせまる。その時、光をまとったサキが麻弓の前に現れた。
第10話 <最高の友達>
サキは呆気にとられている私の方を向くと、にっこりと微笑み
「良かった…間に合って」と呟いた。
「サキ、あなた一体…」
どうしちゃったの?と言う前に、サキは私から少し離れて、周りを取り囲んでいるゾンビ達に近づいていく。1人のゾンビの額に自分の指を置くと、少し間が空いてゾンビの頭から白い煙のようなモノが天に昇っていき、続けて体がまるで砂で出来てたみたいにボロボロになって風に乗って跡形も無く消え去った。
同じ事を他のゾンビにも繰り返す。10人くらいいたゾンビの群れが、次々とその数を減らしていく。怒りに燃えているカクマが、サキを止めようと凄い勢いでこちらに向かってきた。とっさに私はサキのそばにいき、お札を取り出して身構える。思った通り、お札から発せられる光にカクマは動きを止め、一定の距離から近付けなくなった。
「ありがとう、麻弓」
サキは前を向いたままゾンビ達を消しさる手を止めないけど、その横顔は笑っているように見えた。そうこうしているうちに、ゾンビの人数は残り2人になっていた。
「ナラバ…フタタビクラウガイイ…!」
今度は『カマイタチ』を放とうと両手を広げるカクマ。あのつむじ風はかなりの早さだけど、まっすぐにしか進まないから真横に避ければ大丈夫な事は学習済みだ。カクマの両手から突風が放たれ、私はその瞬間全力で横っ飛びして逃げる。でも、ゾンビ浄化に集中しているサキは避けられそうもない。
「サキ、危ない!」
凄まじいスピードでつむじ風は突っ込んできて、とても助けに行く余裕は無い。あっという間につむじ風はゾンビとサキに到達し、そのまま私たちの背後にあった小屋に当たり壁の一部がバラバラと崩れる。つむじ風をもろに食らったゾンビの体は跡形も無く飛び散った。一方サキの体には傷1つついていない。
「手間が省けたわ」そう言って両手を軽くはたくサキ。
どうやら今のが最後の1人だったようで、カクマは悔しそうに歯ぎしりをする。
「サキ…ソノチカラハ…マサカ…!」
「そう…コウノスケから授かった守人の力。私がカクマ様の所に長くいたおかげか、麻弓に比べると少し強力になったようね」
自信満々に口角をあげるサキを横目に、私は目の前の状況を理解するのに時間がかかっていた。サキは今、一体どんな状態になっているんだ?彼女の体はさっき小屋で崩れ落ちたはずなのに…それに『カマイタチ』が直撃しても、無傷ですり抜けていったようにも見えた。
「体が崩れてくれたおかげで…あの子にまた会えた。私、あの子に『絶対カクマ様を封印する』って約束してきた…だから、これでもう終わりにしましょう……麻弓!」
必死で考えていた私に、サキが大声で呼びかける。私は我に返って彼女の顔を見た。
「これから何があっても、躊躇しないで私についてきて!」
その表情は、なんだかこわばっているようにみえた。
「ねえ、一体どういうこと!?」
戸惑う私を置いて、サキは凄い早さでカクマの所に向かっていく。あまりの早さにビックリしたけど、よく見たら足が全然動いてなかった。つまりあの子は、少しだけ宙に浮かんでいるようだ…いや、呆けている場合じゃ無い。彼女の後をついて行かなくては…。私は既にカクマの元へ辿り着いたサキを追って走り始める。
遠目からだけど、サキは両手を前に出して、カクマを押しているように見えた。カクマも、同じような格好で対抗している。サキの3歩後ろくらいまで来たら、2人の間に薄い膜が張られているようになっているのが見えた。サキの方が白、カクマの方は黒。お互い微動だにしないけど、なんとも言えない迫力が伝わってくる。
「麻弓、お札を前に出して!」
私が来たことに気づいたサキが、前を向いたまま指示する。言われたとおりお札を前に突き出すと、カクマが2mくらい下がった。その分サキが前進する。
「……私が動きを止めて、麻弓が圧す。2人じゃないと、出来なかった…」
サキの表情は相変わらず硬い。だけどどことなく嬉しそうにも見えた。
「サキ、キサマ…ワカッテイルノカ?ワタシヲフウインスルトハ、ドウイウコトカ…!?」
「カクマ様、あなたには…感謝しています。1人で心細かった私に、優しい言葉をかけてくださった。操られていたけど『あなたに仕えるという使命』が、私に生きがいのような物を与えてくれました」
サキが少しずつ前に出る度、私も一歩、また一歩と進んでいく。そうするとカクマは同じ距離を保ったまま下がっていく。まるで磁石の同じ極同士が反発し合うみたいに。
「コノママフウインスレバ…ワタシノチカラハカンゼンニウシナワレ、キサマハカクジツニ『ジゴク』イキダ……ソレハイヤダロウ?」
え、今なんて言った?『地獄』?サキが地獄に行くなんてそんな馬鹿な…驚いて目を見開いた私とは対照的に、サキの表情は一切変わらない。
「…イマナラマダユルシテアゲルカラ、ジュツヲトキナサイ…」
気づいたら、戸が半開きになった祠の目の前まで来ていた。後ひと押し…というところで、サキが歩みを止めたので私も立ち止まる。長い沈黙の後、彼女はゆっくりと口を開いた。
「…………………………構いません」
「ナ、ナンダト!?」
カクマと同じくらい、私の体にも衝撃が走った。
「私は、操られていたとはいえ、沢山の人を殺しました。コウノスケのように意志が強ければ、そんな過ちはしなくて済んだのに……あなたにも、ずっと良いように使われてしまった。全ては、私の心が弱かったから………だから、その報いはちゃんと受けるべきだと思っています」
私は大きく生唾を飲み込んだ。耳元で聞こえたかと思うほどの大きなヤツだ。11月の深夜の山奥だというのに、全身から汗が噴き出してくる。一歩、サキはカクマとの距離を詰めた。
「ヤメロ…ソレイジョウ……チカヅクナ……」
サキが持つ堅い意思、気迫のようなものに、あきらかにカクマは恐れおののいている。さっきまでの妖しい威厳は一切感じられない。また一歩、カクマとの距離が縮まった。
「カクマ様……あなたも一緒に堕ちて、罪を償いましょう」
サキは更に一歩、足を踏み出す。お札の効力が発揮出来るスペースが確保できたが、私もサキの迫力に圧倒されて思わず進むことを忘れていた。
「イ、イヤダ……ジゴクニハイキタクナイッ……!フウインモサレタクナイッ……!マタヒトリボッチニナルナンテ………イヤダイヤダイヤダッ!!」
カクマはまるで幼児になったかのように首を横にふった。そのなんとも情けない姿を見て、私は(ああ、カクマも私たちと同じだったんだな…)とぼんやり考えた。
覚悟を決めた少女はもう一歩、前に出る。いつの間にか2人の間に張られていた膜は消えていて、サキが手を伸ばせば届く距離に、カクマは迫っていた。
「イヤダ、イヤダ、イヤダ、イヤダ…モウイヤダッ!クラクテツメタイ、アンナバショデマタ、ヒトリボッチニナンテナリタクナイッ!!」
カクマはぽろぽろ涙を零していた。最初見たときはやつれた成年ぐらいに感じられた顔が、今は私たちよりも幼く見える。おもちゃ売り場でだだをこねる子供のように暴れるカクマを、サキは包み込むようにそっと抱きしめた。
「………安心してください。私が、ずっと一緒にいます。カクマ様は……独りぼっちなんかじゃありません」
そう言うと、2人は小さな光の玉になり、まとめて祠の中に飛び込んだ。その瞬間、目も眩むような閃光が祠の中からほとばしる。
「ウワアアアァァァァァ!イヤダアアアアアアァァァァァ!!」
中からカクマの絶叫が聞こえる。祠がガタガタと激しく揺れる。目の前の光景に驚くばかりの私に、祠の中からサキの声が聞こえてきた。
「麻弓、何してんの!?早くお札を貼って!!」
「で、でもそうしたらあなたが…」…そこから先は、言葉にしたくなかった。
「私は、ずーっと前に死んだの!だから、いくべき場所に、いくだけなのっ!!」
「ううぅ…でも、でもぉ…」
お札を握りしめる手が震えていた。私がお札を貼ってしまえば、サキは…サキは……!
「お願い!カクマ様を止めていられるのも、あとちょっとだけなの!私が力尽きたら、もう誰も止めることが出来なくなってしまう……!!」
「あ、ああぁ…………」
さっきから声にならない声ばかりが出る。気づけば手だけで無く、口先から足下まで、全身くまなく震え上がっていた。
「もう、限界…だから、早くぅ……」
祠の振動がより激しくなる。今にも壊れそうな勢いだ。……………ここで私がビビって封印するのをためらうって事は、サキの『償うという決意』を踏みにじることになるんじゃ無いか?それだけじゃない。コウノスケ君の想いも、裏切ることになってしまう。何より、カクマを封じ込めるチャンスは、今以外あり得ない……………………覚悟が決まったら、全身の震えが止まった。
「……………サキ、私やるよ」
ゆっくりと祠に近づいていく。
「そう、それで良いの…」
戸に左手をかけ、右手にお札を構える。
「ありがとう………麻弓、あなたは…」
力を使い果たしかけているのか、サキの声はずいぶん弱々しくなっている。彼女が何を伝えたいか、すぐわかった私はかぶせるように想いをぶつける。
「私も……サキ、あなたは…」
何十年もずっと開いていた戸が、閉められた。
「………最初で最高の、友達よ」
戸をまたぐようにしてお札を貼った瞬間、祠から漏れていた強烈な光が内部に収まっていき、一瞬あたりがまっ暗になった。続いて中から凄まじい風が吹いて、私の体ははるか後方へ吹っ飛ばされた。
……………………闇と静寂が辺りを包んでいる。
(……………おねーちゃん、おねーちゃん!)
誰かが私を呼ぶ声がする…。
(おねえちゃんのおかげで、カクマさまがつくったせかいがこわれて、でてくることができたよ!)
この声、聞いたことがある…でも誰だろう?思い出せない…。
(もうすぐじょうぶつしちゃうから、ぼくのこともわすれかけてるだろうけど、ぼくはずっとおねえちゃんのこと、おぼえてるから!)
誰なのかも思い出せないまま、声は少しづつ遠ざかっていく。
(ぼくはあっちで、サキやカクマさまのことずっとまってるよ……!おねえちゃんもしんだら、またあおうね!……なるべくおそくがいいかな!?)
声は、無邪気に笑った。この笑えない冗談は確実にどこかで似たような事を聞いている。それは確かなのに、どうしても思い出せない。それどころか、声そのものもテレビの音量みたいにどんどん小さくなっていく。
(……………じゃあ、そろそろいくよ…………ほんとうに、ありがとう…!まゆみおねえちゃん……!)
光の玉が、天に昇っていく……そんな気が一瞬したけど、すぐに再び闇と静寂が支配する空間に戻った。結局誰の声だったんだろう…?
「………おい!大丈夫か!おい!」
体が激しく揺さぶられている。闇と静寂を保てなくなった私は、重いまぶたをゆっくりとこじ開ける。目の前にオレンジ色のダウンジャケットを来たおじさんが飛び込んできた。意識がだんだんはっきりしてくると、どうやら私はおじさんに抱きかかえられている状態になっていることがわかった。
「お、目を覚ました。みんなー!女の子が目を覚ましたぞー!!」
おじさんの呼びかけで、その辺に散っていた人たちが5人ほどわらわらと集まってきた。それぞれ赤、青、緑、黄色、桃色のダウンジャケットを纏っている。戦隊モノかよってちょっと思った。
「おお、良かった良かった」「ノボルもこれで安心だねぇ」「君、怪我はないかい?」「大変だったろう…こんなに汚れて…」「それにしても酷い有様だな、ここは…」
それぞれが思い思いのことを一斉にしゃべるので全くまとまりが無い。結局誰の言葉も頭に入ってこなかった私は、目の前の情報から整理することにした。
私は祠のあったところから、壁が崩れた小屋の中まで吹っ飛ばされていた。全身に藁がまとわりついており、おそらく藁が溜まっている所に突っ込んだのだろうと推測できる。そのおかげかたいした怪我もしていなさそうだ。目が覚めたばかりなので、感覚が鈍いだけかも知れないけど……。
「あの、あなたたちは一体誰ですか?」
私は抱きかかえてくれていたおじさんの手を借り、ヨロヨロと立ち上がった。
「僕らは、浅山昇と同じ登山グループのメンバーさ」
「君の事は、浅山からずっと教えて貰っていたよ」
「大したもんだよねぇ、こんな山奥で1人でよく無事だった」
ほっとくとそのままみんなわらわら喋りそうなので、私は次の質問をする。
「どうしてここがわかったんですか?」
浅山さんと私は昨日さんざん迷い尽くした。どうしてこうあっさりと見つけることが出来たんだろう。
「あいつが君に渡した懐中電灯さ、遭難対策グッズになっていて、GPS機能がついているんだよね」
青いジャケットのおじさんが答える。軽い衝撃を受けた。もしかして浅山さんって返して貰い忘れたんじゃ無くて、わざと私に渡したままにしてくれていたの?でもあれ?でも山の中じゃずっとスマホが圏外だったり、GPS機能付きのカーナビやマップは一切役に立たなくなっていたはずだ。
「効いたんですか?GPS」私はおじさん達に尋ねた。
「うん。浅山くんからは『多分使い物にならない』って聞いてたけど、何の問題も無く使うことが出来たよ。なんで彼が3週間も迷っていたのが不思議でならない」
続けて黄色のおじさんが答える。また衝撃の一言を聞いた。浅山さんが3週間も迷っていただって?つまり今は…。
「すみません、今日は何月何日ですか?」
「その質問、ノボルも同じ風に聞いてたよ。今日は12月10日。ノボルが発見されてからは丁度10日経つねぇ」
今度は桃色のおじさん…いや、おばさんが答えた。そういえば似たような経験を、夏休みにもしたなぁ…カクマが支配している山だったから、時間軸まで狂っていたんだろうか…?なんだか浦島太郎になった気分だ。
「浅山さんは、今どうしているんですか?」
「ふもとの病院で安静にしているよ。昨日やっと目が覚めたんだけど、全身の骨が折れてるから、しばらくまともに動けねぇなありゃ…」
「おい、子供にそんな話するなよ」
「おっとすまねぇ。まあ、致命傷はないらしいから安心しな」
喋り過ぎてしまった緑色のおじさんはニカっと笑い、止めてくれた赤いジャケットのおじさんはやれやれと首を振る。個人的にはそれ以上の衝撃シーンを次々と目撃していたから、それほどショックじゃなかったけどとにかく浅山さんが生きてて本当に良かった……。
「これから君も病院にいって検査を受けることになるだろう。敷地の外に車があるから、一緒に行こうか」
その先に車があるのだろう、オレンジジャケットのおじさんが小屋の外を指差す。
「はい………あれ?」
歩き出そうとしたとき、私は気づいた。
「どうしたの?ちゃんと歩ける?」
「………いえ、何でも無いです」
本当はなんでもあった。小屋にあったはずのモノが、無くなっている…。崩れたサキの体と、子供の白骨死体。壁に穴が空いたせいで、吹きつける風に乗って散ってしまったんだろうか?風といえば、カクマは風を操る男だった。2人の遺体が風に乗って散ったとしたら、なんだか彼を慕って、ついていったようにも思える。
おじさん達に囲まれて小屋を出ようと出入り口まで来たとき、床に薄暗いシミが広がっているところがあるのを見つけた。そしてそのそばには、くまのぬいぐるみ。
「…………………………」
私はそっとぬいぐるみを拾い上げた。
「……お嬢ちゃん?」
薄汚れたぬいぐるみを大事そうに抱きかかえる私を、おじさん達が心配そうに見つめる。
くまの頭を何度か優しく撫でると、込み上げてきた思いを抑えきれなくなり、ぽろぽろと涙がこぼれ始めた。一旦そうなってしまうともう歯止めが効かない……私は声を上げてサキが残した大切なモノを濡らした。
山には、穏やかな風が吹いている。
To be continued...