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日記・好きな事の考察や感想・オリジナル小説等を書いていきます。

読書感想文 No.1『夏の庭 The Friends』

おじさんが読んだ本の感想文でも書いてみようかなと思います。

 
記念すべき第一回は、湯本香樹実先生の『夏の庭 The Friends』。 
夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

 

この本との出会いは物書きを目指しているおじさんの作品を読んだある友人が「参考資料」としてオススメしてくれたのがきっかけです。

 
<あらすじ>
 
小学6年生の少年3人が、6月のある日「近所のおじいさんが死ぬ所を目撃したい」と盛り上がり、荒れた家に独りで住む老人の観察を始める。
最初は塀の向こうからコソコソと観察するだけだった3人だが、ひょんな事からおじいさんと関わりを持つことになり、成り行きでゴミ捨てや部屋の掃除等に付き合っていくうちに、少しづつおじいさんの人となりを知り、奇妙な友情が芽生えていく------。
 
<感想>
 
内容が解りやすく、情景描写も適度に織り込まれていて読みやすい文章でした。
巷で話題になるような衝撃展開や突拍子も無い設定は出てこないけれど、3人の少年たちの行動や感情、おじいさんの優しさや厳しさといったキャラクターの内面の部分を派手に飾る事なくさらりと書き上げているのは感服します。
少年とおじいさんの関係の築き方がとても丁寧で、リアリティに溢れていて自然と少年たちに感情移入することが出来ました。
 
展開や盛り上げ方は『普通』で、正直途中でオチが予想できて本当にその通りになっちゃうんですけど、「分かっていても辛い」こういう物語の方が案外心に響きます。
少年たちはおじいさんから知恵を貰い、おじいさんは少年たちから生きる気力を貰い、問題に立ち向かう勇気をお互いに貰い会う事で登場人物たちは少しづつ成長していきます。
 
ああ、読んで良かったなぁと思える気持ちのいい読後感でした。
少年たちの行動や発言が本当にリアルで、「自分もこんなだったなぁ」と懐かしき少年時代を思い出します。
214ページと短いお話なので、気楽に読めました。
 
<一番印象に残ったシーン>
 
3人の少年のうちの一人、川辺が自分の家庭環境とおじいさんが昔戦争から戻った時に家に帰らずそのまま奥さんと生き別れた事を重ねて、運命の不条理さを子供らしくも胸に刺さる例えで論じたときのシーン。
 
「俺にはおとうさんがいないし、おじいさんの子供になることも出来ない。人間は大気や風や鳥の翼の仕組みを解明して飛行機なんてものを作ってしまうのに、なんで世の中みんなが生きやすくなる仕組みがないんだ。なんで俺のお母さんは日曜日のデパートでビクビクしてるんだ。なんで俺は「いつか後悔させてやれ」って言われなきゃならないんだ。」
 
原文ママを載せるわけにはいかないので、一部改変&抜粋。
 
本当、人生とはままならない事が多すぎますよね。
ちょっとしたすれ違いでいろんな道が出来て行く。同時に別の道を歩むことは出来ないし
隣の道を覗き見をすることは出来ない。
学校、恋愛、仕事、家族…。
これから先もたくさんの不条理を経験していくことでしょう。
その度に自分が納得出来たらそれでいいと思います。
 
 
ちなみに映画化もされているそうなので、機会があればみてみようかな。