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日記・好きな事の考察や感想・オリジナル小説等を書いていきます。

2017年夏、某ファミレスでの出来事

今回は去年の夏にあったエピソードを書こうと思います。

 



夕飯時にうちの近所にある某ファミレスへ行きました。

食後に「デザートでも食べるか」としばらくメニュー表とにらみ合い

じっくり漬け込んだふわとろフレンチトースト チョコバナナ』

とかいう情報詰め込みまくりなメニューに目が止まりました。

 

僕は甘いものには目がありません。チョコも、バナナも、フレンチトーストも好きです。
しかもそれをじっくり漬け込んでいるわけですよ。ふわとろなんですよ。
その名前に完璧にノックアウトされた俺は、即注文ボタンを押して店員を呼びました。

やってきたのは笑顔がすてきな50代前後のおっちゃん。
はやる気持ちを押さえつつ『じっくり漬け込んだふわとろフレンチトースト チョコバナナ』(略してじっくりバナナ)を注文した。

おっちゃんはメニューを聞いてメモする。紙とペンで。

夕食の注文をしたときに来たねーちゃんは、確か電子注文機を駆使してました。
アナログ派の親父なんだな…とその時は思ったんです。

注文を書いてからおっちゃんは少し難しい顔をしました。
「フレンチトーストがまだあるか確認しますね」
そう言ってスタッフ用のトランシーバーに耳を傾け、しばらく間があいてから
「大丈夫です。ご用意出来ます」
と満面の笑みを提供してくれました。
厨房の中へ戻ってゆくおっちゃんを見届けて、俺はじっくりバナナへの想像を膨らませていた。

 

〜〜〜以下妄想タイム〜〜〜

...ふんわりとしたトーストに差し込まれていくナイフ。チョコソースと生クリームが谷底に飲み込まれるように沈む。一口サイズにカットされたトーストの上に、これまた一口サイズにカットされたバナナをのせる。小さな夢の国の誕生だ。
口の近くへ運ぶとチョコの優しくも大人の香りが鼻腔をくすぐる。う〜ん、マンダム。
そのまま口いっぱいに頬張ると、『幸福の甘さ』が口から全身へ広がる。

まさにトースト、チョコ、クリーム、バナナが織りなす弦楽四重奏だ。

〜〜〜以上妄想終了〜〜〜

そんな至福の妄想もそこそこに、先ほどのおっちゃんが戻ってきました。


「すみません、やっぱりフレンチトーストは切らしていたみたいです」


僕は内心落胆しました。さっきの確認はいったい何だったんだ。誰に確認したんだ?


何か別の物を注文しようとしますが、頭を『じっくりバナナ』がすっかり支配していたのでうまく切り替えがききません。メニュー表に広がるデザートたちをとどまることを知らないハエを見るような気分で眺めていると、視界の端にあるメニューが入りました。
それは『チョコパフェ』でした。俺はこれだと思い、即座に注文しました。


最大の目標は適わなかったけど、チョコレート味のデザートということに変わりはありません。人気バンドのボーカルが血迷ってソロ活動するようなモノです。それにパフェでもフレークや生クリーム、クッキーなど食感のワンダーランドを楽しめるじゃないですか。
そうだ、それでいいじゃないかと自分に言い聞かせます。

 

 

 

 


(…じっくりバナナ、食べたかったなぁ…)

 

失恋のショックを引きずりながら新しい女と遊んでいるような気分です。


5分ほど待っていると、先ほどのおっちゃんとは違って若い女性店員がメニューを運んできました。

「お待たせしました。こちらプリンアラモードになります」


(………!?)

 


(………ぷりんあらもぉど?)

 


(なんだそれは!?)


 

 


(そんなもん呼んだ覚えはない!!!)

脳内は完全にチョコパフェで満たされていたので、目の前の状況が理解出来ませんでした。
見知らぬ親父が家に勝手に上がり込んで居間でTVを見ているぐらいの衝撃。

 

「あの…違うんですけど…」

 

混乱する頭を落ち着かせてようやく声を絞り出しました。

 

「チョコパフェ…頼んだのは…チョコパフェ…」

 

そしてメニュー表の理想郷を指さします。


「え?えっ!?」


慌てふためく店員さん。伝票を見返しているのでこちらも確認させて貰うと、確かに「プリンアラモード」の品名がタイプされていた。

 

「あっ・・・申し訳ありません!」

 

一度おいたアラモードを下げようとする店員さん。

(待て待て待て待て!まさかそのアラモー、捨てる気じゃあるまいな!?)

「大丈夫です、このままで、これ食べます!」

僕は慌ててアラモをテーブルに戻させました。MOTTAINAIの精神、これ大事。

 

「チョコパフェとお値段が変わってしまいますが…」

 

確かにアラの方が30円程高い。しかしこのやりとりももう疲れていた僕は、
「いいです、これでいいです」とアを食べることを強行しました。

意識の外からやってきたプリンとフルーツの盛り合わせは、思いの外自分の舌を楽しませてくれました。プリンの上にメロンソースがかかったソフトクリーム、メロン、バナナ、キウイが七福神の如く乗り込み、プリンの下にはフレークと柑橘系のムースが敷き詰められており、飽きることなく食べ切る事が出来たので満足度は高かったです。

まあ、チョコパフェが食べたかったけど。

 


もっというと、じっくりバナナが食べたかったけど。

 


願いは叶わない。想いは届かない。現実って残酷ね…


食べている途中、別の席に同じアラモードを持って行く様子を流し見していたんですが、客が苛ついている様子が垣間見れました。
「注文したのに来るの遅ぇよ!なにやってたんだよ!!」とでも言わんばかりの態度。
もしかしたらこっちに来たアラモードは、お宅の子だったのかもしれないね。

とんちんかんな対応をした50代前後のおっちゃんは、アラモード登場以降俺の前に一切姿を現さず、厨房の壁に貼り付けた伝票を眺めていた。店長から
「君が出ると話がややこしくなるから、今日はもう引っ込んでいなさい」
なんてことを言われたんでしょうか。

その後は何事もなく食べ終わって、普通に会計して、いつも通りくじ引いて、当然のように店を出ました。

 

謝罪の一つでもあるかと思ったけど、びっくりするほど何もなかった。



たまに行くとこんな素敵な食事を提供してくれる近所のジョ◯サンが、僕は好きです(笑)