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日記・好きな事の考察や感想・オリジナル小説等を書いていきます。

早朝のうめき声

久々に長期旅行の話をします。


ホントは行ったすぐ後に書くのがネタの鮮度としては良いんでしょうが、読む人からするとどの話をいつ読んでも過去の話であることにかわりねぇだろって持論(言い訳)を持ち出したので、書きたい話を書きたいタイミングで適当に書いていというスタイルで今後もやっていきます。

ということで、今回書くのは6月4日の出来事。
長期旅行の途中だった僕は、尼崎にある友人宅に泊まり込んでいました。
その日、友人とバッティングセンターに遊びに行き、バッティングの他にストラックアウトやフリスビーなどを楽しんだわけですが、実を言うと僕は誰かとまともにキャッチボールをした記憶がほぼ無ため、自分の投球フォームが相当狂ってるという酷な現実に気づいておりませんでした。

こんなに力を込めてるのに、的まで届かない。
届かせようと思って山なりに投げたら、天井のネットにあたる。


軽く投げて余裕で的を射抜く方々は、ボールに半重力物質でも仕込んでいるんじゃ無いかと疑うレベル。

「軸足に体重をかけて…投げるときに逆の腕をまわして…頭は平行移動を意識して…」

等々のアドバイスを適所で入れてくる友人の投手コーチ。
現地ではその全容は把握しきれなかったので、僕らは家に戻った後、投球フォームや打撃フォームの解説動画を夜通し鑑賞していました

部屋の中で解説者のフォームを真似している内に、実践してみたい衝動が抑えられなくなってきた僕は、宿主の(ルームシェア的な生活をしている)に

「今から公園行ってキャッチボールしようぜ」

と誘い、早朝4時過ぎの公園にゴムボール持って行くことにしました。

いい歳した男3人が薄暗い公園でキャッキャウフフする様は、端から見ればさぞかし異様だったでしょうね。
(一応大きな音は立てないように配慮はしました)

 

 


フォーム指導を受けつつ、3人で順番に投げ合っている内に投げ慣れて来て、だんだんとからも「今の良いね!」というリアクションが出るようになりました。

テンションが上がったせいか距離がどんどん離れていき、最初の状態から数倍距離が離れ、気がついたら遠投によるキャッチボールとなっていったその時です

 

 

 

 


…どこからか、かすかにうめき声のような音が聞こえました。

その場にいた全員が動きを止め、お互いに怪訝な顔をします。

早朝の公園…周囲はようやく小鳥が鳴き始めたくらいで、通りには行き交う車も無い。ほとんど静寂と言ってもいい世界に突如飛び込んだ、あきらかに異常な音、不気味な声。

「え…なに今の…」は萎縮します。
それぞれが恐る恐るあちこち見渡していると
「あ!あそこに誰かおるで!」が公園の外を指さしました。
示す方向を見ると、赤い服を着た女性がうずくまっています。

こんな時間にあんな格好で、一体何があったんだろう…。
様子を見ながら「声かける?」「やだよ」的な会話を繰り広げていると、女性はよろよろと立ち上がり、1週間分の着替えが入りそうなキャリーケースを転がして、住宅街の方へ歩き始めました。

「後、つけようよ」と僕は2人に提案すると、ジャンケンで決めよう」が便乗してきました。その結果、が単独で調査しにいく事に。

「別の通りを走って、真正面に回り込むわ」早朝マラソンにいそしむお兄さんのように軽やかな足取りで大通りを駆け抜けていったY。

彼の背中を見送った後、僕はこう考えました。


「Yは真正面から女性を追う」

 

 

「僕たちは後ろから女性を追う」つまり

 

 


ハサミ討ちの形になるな…

早速カメラを起動し、録画しながらと共に女性が入っていった路地に足早で向かう。

 

 

 

 


そこに女性の姿はありませんでした。

念のため、僕たちは路地の先まで歩いてみることにしました。しばらくすると、ずっと遠くの方から走って戻ってくると合流しました。

「おった?」息を荒げては僕たちに尋ねます。
「全然」僕たちは首を横に振る。
「俺一応、あっちの公園(500mくらい先)まで見て来たんやけど、全然おらんかった」も首をかしげました。

赤い服。あんなに目立つ格好をした女性を、そう簡単に見失ってたまるか。


路地は数100メートルは余裕で見通せるそこそこ広い道。女性の姿を最後に見てから2分、Yが追いかけ始めてから1分とかかっていない…女性は大型のキャリーケースを転がしていたので、そんなに素早く動けるとも思えない。

 

 


にもかかわらず、女性は我々の前から忽然と姿を消してしまったのだ。

その後もしばらく周りの路地を手当たり次第探してみましたが、影も形も見当たらない。
結局諦め、完全に夜が明けて文字通り白けた僕たちは家に帰ることにしました

帰り道、3人で女性の正体を推理しました。

情報を整理すると
・女性がうずくまっていた時の体は、駅の方向を向いていた
・しかし、女性は駅と逆方向の住宅街へ歩き出した
・早朝
・大型のキャリーケース
・うめき声(泣き声?)


これらの要素から我々が導き出した答えは

 

 


深夜に大喧嘩したカップルがいて、女性が「もう出ていく!」と勢い任せに荷物をまとめ始発の電車に乗ろうと外に出てみたは良いものの、自責と後悔の念に耐えかねて嗚咽を漏らし、思い直してよりを戻そうと彼氏がいる家に戻っていった家は近所にあったので、僕たちが追いかけ始めた時には既に家に入ってしまったというシナリオ。

 

 


しかし、あくまで想像の域を出ませんし、30分ほどキャッチボールをしていた僕たちがキャリーケースを転がす音に全く気づかずいつのまにか公園の目の前に来て突然すすり泣くなんて、不気味すぎませんか?

 

 


いやぁ、早朝の公園って奇妙なことが起こりますねぇ………。