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現場責任者の名前を4ヶ月間も間違え続けていた話

突然ですが僕は人の名前を覚えるのがめちゃめちゃ苦手です。


進学や就職で新たな人間関係が構築される度、顔と名前が全員一致仕切るまでに余裕で3ヶ月~半年はかかってしまいます。

のちに親密な関係になる人たちですら最初は名前を全然覚えていません。
(相手はとっくにこっちの名前をフルネームを覚えているというのに…(^_^;))

でも日本語というのは便利なもので、声をかけるときに「あの」「すみません」「失礼します」等を頭につけることで、ほとんどの局面を相手の名前を呼ぶことなく済ませてしまえるのです。

今回はそんな感じで僕が相手の名前を呼ぶことを避け続けた結果起きてしまった、恥ずかしい失敗エピソードをお話しします。


※全て解決した状態から書いているので伝わりにくい箇所がある可能性があります。あらかじめご了承ください。



―――昨年の11月中頃、現在勤めている工場へ初出勤した日。

「現場責任者のIです」
そう名乗って僕に工場内を案内してくれた現場責任者のIさん。

名前が全然覚えられないことを自覚していた僕は対策として“その名前と近い有名人や漫画やアニメのキャラクターと結びつけて覚える”という作戦を取ることにしていました。

Iさんのお名前で僕が連想したのは某麻雀漫画に登場する盲目の代打ち。

見た目も多少似ている気がしたのでIさん=盲目の代打ちということで脳内インプットが完了します。



メモして覚えればいいのに。

というツッコミは一切受け付けません。



工場内では20数名が働いており、その中にAさんという若そうなのにそこそこ重要そうなポジションで働く、珍しい名字の方がいました。

聞き慣れない名字だったので連想づけの必要なく一瞬で海馬にすり込まれていった『A』という名字。

しかし、Aさんと僕は仕事中に関わる機会がほとんどなく、いつのまにか僕の脳内では若くてしっかりしてる人≠Aさんという数式が成り立ち、“若くてしっかりしている人の名前は知らないけど『A』という珍しい名字の人が職場にいるのは知ってる”という自分で書いても意味がわからないアホ丸出しの解釈を行っておりました。

そんな状態になった僕は今度は「じゃあ『A』さんって誰のこと?」と職場で関わった数少ない人間関係からAさんを導き出そうとします。

この時点で働きはじめて2ヶ月ほど経過していたと思います。前述したとおり声をかける時は「あの」「すみません」「失礼します」で始めていたので自信を持って(←信用できんが)名前を覚えていたのは3人くらいでした。



Aさんを誰と結びつけるか、僕なりの意味不明な解釈が発動します。



(…現場責任者の方の名前が『A』だな。ばっちり覚えてるぜ…!)



脳内から盲目の代打ちが綺麗さっぱりいなくなってる狂気の沙汰。



現場責任者の方はオーラがあるというか、外見からただ者ではない感が漂っていたので、それが珍しい名字『A』と結びついてしまったのですね。


自分で書いてても頭イカれてんのか?って思いますね。


でももはや疑う余地がないほど脳内で“現場責任者=Aさん”という公式が完璧に成り立ってしまい、そのまま名前を呼ぶことなく1ヶ月ほど経過したある日。

業務に関することでふとした疑問が浮かんだので、僕は前を歩いていたAさん(実際はIさん)に声をかけることにしました。


「あの、Aさん…」

 

 

 


何を血迷ったか名前を呼んでしまいました。


するとAさん(実際はIさん)は大げさな口調で



「ぶっぶ~、オレはAじゃないでーす!」



と振り向きつつ言われ、僕は頭が真っ白になりました。
その時の僕にとっては「『1+1=2』は間違いです」と教えられたような衝撃でした。

(……え…じゃあ目の前のこのおっちゃんは…誰…?)

脳内がざわ…ざわ…しています。
おそらくあごや鼻も鋭利に尖り、背景はグニャ~アと歪曲していたことでしょう。



「Aくんならトイレにいるけど、用事あるなら呼ぼうか?」

おっちゃんはわざとらしい心遣いを発揮し、Aさんに声をかけようとします。

「いやいやいやいや、良いです。大丈夫です!失礼しました!!」

質問も大した内容ではなかったし、名前を間違えてしまった恥ずかしさから逃げるようにその場を立ち去りました。

それ以来“現場責任者の名前は何なのか”思い出そうとしたり独自に情報収集する日々が始まります。ぶっちゃけ誰かに聞いたら一発でわかる事なのですが、それはなんか負けた気がするのでしたくありませんでした。(恥を上塗りたくないという貧相なプライドを抱え込んでいるとも言う)

最初に自己紹介された時から既に3ヶ月以上過ぎ、名を名乗られたというシーンだけは覚えているが、肝心の名前が欠片も思い出せない。衣服に名前がわかるアイテムを身につけているわけでもないし、更衣室で使用しているロッカーを見ても名前が書いてない。

(あーマジでなんて名前だったっけー…完全に思い出すまで謝ることも声をかけることも出来んぞ…)

と連日頭を悩ませていたある日、シフト表に並んだ名前をみて僕はあることを思い出しました。





そうだ、盲目の代打ちだ。



あの人は某麻雀漫画に出てくる盲目の代打ちと同じ名前だったぞ。


乾いた水路に清涼な水が流れ込むような感覚でした。


よし、完璧だ。完璧に思い出した。
後はタイミングを見計らって声をかけ、謝罪するのみ……っ!


そして今日の仕事終わり、ついにその時が来ました。

「あの、すみません……お名前って…“I川さん”…ですよね?」








 

 

 

 

 

 


「…………違うねぇ…」



 


ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!??(その時500円おじさんに電流走る―――!)


「誰かに騙されてるんじゃないの?」

狼狽する僕を面白そうに見るおっちゃん。

もう考えられる手段は尽くした。この人は絶対に、盲目の代打ちと同じ名前だったはずだ。そう名乗ったから僕は記憶の結びつけとして盲目の代打ちを選んだのだから。

「シフトあるから、こん中から俺の名前当ててみなよ」

おっちゃんはニヤニヤしながら従業員の名前が並んだシフト表を僕に見せる。

 

 


よく見ると『I原』という『I川』とIに入る漢字が全く同じ人物がいた。

 

 


「……………まさか…これ…ですか?」

僕は恐る恐る『I原』を指さす。

 

 

 

 


「………ピンポーン。正解!」

ここまで来てようやく僕は全てを理解しました。
僕は最初の自己紹介の時点で名前を聞き間違えていたのだと。

 


記憶として結びつけるべきは代打ちではなく、イケメン俳優のほうだったのだと。

 


この間違いが凄いのは最初の自己紹介から聞き間違えていたにも関わらずそれに該当する別人もちゃんと存在していることから『現場責任者=I川=盲目の代打ち』という図式、思い出し方がさも正解であるかのように上手に仕組まれている所です。


I原さんは「誰かに騙されてるんじゃないの?」と言っていました。

確かに、こんなにも偶然が重なったことによる恥ずかしい間違いは天の神様が気まぐれで起こした運命の悪戯のように思えてきます。



ククク…面白い…





狂気の沙汰ほど面白い…!










……誰か僕を銃で撃ち殺してくれ。

 

 




というわけで、よいこの皆はこんなクッソ恥ずかしい思いをしないように、人の名前はちゃんと覚えるんだゾ☆

覚える気がない人は伝家の宝刀「あの」「すみません」「失礼します」を駆使して徹底的に名前を呼ばないようにしよう!500円おじさんとの約束だゾ!(゚∀゚)アヒャ