オリジナル小説『友達100人できるかな?』第8話
これはおじさんのオリジナル小説です。
毎週水曜日の21時更新を予定しておりますので、暇つぶしに良かったら
見てってくださいまし。
*前回のあらすじ*
悪霊カクマに白い空間に閉じ込められたと語る少年は、麻弓にカク
第8話 <神様お願いします>
少年から借りた力のお陰で、迷いなく小屋まで来れて目的のモノも
鞄の中のお札がぼんやりと光ってはいるが、それだけだと心許ない
暗くて、寒くて、独りぼっち…少年やサキも似たような気分を味わ
『友達作り』を実行させられたサキや他の亡くなった子、山で事故
体育座りをして膝小僧に顔を埋めた状態が一番しっくりきて、その
立ち上がってから心を落ち着かせようと3回深呼吸し、意を決して
「麻弓…そこにいたのね」
繋がった、と思った瞬間に向こうからサキの声が聞こえてきた。あ
「あなたに…嬉しいお知らせがあるの。もうすぐつくから、そのま
一方的にそのまま電話は切れた。完全に出鼻をくじかれて、何も言
風の音に混じって2回、ゆっくりと戸が叩かれた。間髪入れず音も
「探したわ…いなくなっちゃうなんてひどいじゃない」
言いながら一歩、また一歩と近づいてくる。足音は聞こえない。
「……………サキ、あなたは………」
ぬいぐるみを見せて、少年に教わった言葉を言う。たったそれだけ
「安心して。もう麻弓は関係ないから」
意外な言葉が飛び込んできた。
「どういうこと…?なにが…『関係ない』の?」
恐怖でうわずりそうになる声を抑えようと、わざとゆっくりと話す
「私が麻弓に会いたかったのは、うれしいお知らせがあるからなの
(まさか、そんな馬鹿な…それってつまり、その…)
上手く言葉が出てこない。思考をまとめようと頭を働かせていると
「麻弓のおかげで、友達を100人作ることが出来たわ。本当に、
サキは口角を不気味に持ち上げ、深々とお辞儀をした。100人殺
「あなたは逃げちゃったけど…代わりに近くにいたおじさんに、友
聞いた瞬間、血の気が引き、全身の毛が逆立つ。頭の中が真っ白に
「…あの人、麻弓が連れてきてくれたのよね?」
やめて。
「手伝ってくれて、ありがとう…」
やめて。お願いだから、それ以上言わないで。
「あなたは本当に私の…大切な『トモダチ』よ」
「やめてっ!!」
もう聞きたくない。頭を抱え、髪をかき乱して思い切り叫んだ。私
「…………なんで?なんでなの?」
もう落ち着くとかそんな事を考える余裕はなかった。震えたって、
「サキも、カクマってやつもおかしいよ!どうしてそんな簡単に人
「私、友達を作っているだけよ。それがいけないことなの?」
サキは少しも悪びれる様子なく小首をかしげ、そのまま話し続けた
「私は、私と同じ立場の友達を作っているだけ。どん底から救い上
その約束を果たした先に、自分がどうなるのか彼女はわかっている
「もうすぐ、カクマ様がこの神社にやってくるわ。そうしたら、私
言いながら、嬉しそうに体を右へ左へ揺する。
「でも、100人殺してしまった魂は…」
私が言い切らないうちに、サキは体を斜めにしたまま急に硬直し
「カクマ様に食べられちゃうんでしょ」
光のない瞳で見つめて私の話を遮った。
「知っているなら、なぜ逃げないの?」
「だって逃げる必要なんかないもの。カクマ様と永遠に一つになれ
不適に笑うサキを見て、私はうろたえた。まさかここまでカクマの
「だから、カクマ様にお伝えする前に、麻弓に会っておきたかった
自分がこれから食べられてしまう事を知っていたから、私に会いに
(今なら、まだ間に合うかも…)
ダメ元で私はくまのぬいぐるみを差し出した。
「……?なぁに?それは……」
サキは不思議そうにくまのぬいぐるみを見つめる。まさか覚えてい
「アマチ・タナヒ・コタマチミセラ…」
言い切らないうちに、突然凄まじい悪寒が体中を駆け巡った。
(この感覚……まさか…!)
思わず呪文を止め、迫り来る嫌な感じへ神経を研ぎ澄ませる。
「ああ……いらっしゃったのね…!カクマ様っ…!」
サキは振り返り、飛び跳ねるように小屋の外へ出て行く。私はぬい
「カクマ様………お待ちしておりました」
サキが土下座の格好で丁寧にあいさつをしている。
「…サキ…ドウシタンダイ?」
切れ長の瞳をサキの背中に向け、男は彼女に語りかけた。見た目か
「私、ついに友達を100人作る事が出来ました!やっとカクマ様
と今まで聞いたこともないような可愛らしい声でハキハキと答えた
「ソレハ…ヨクガンバッタネ。ホメテアゲルカラ、タチナサイ」
「えへへ…ありがとうございます」
頬を赤らめながら、ゆっくりと立ち上がる。その時、カクマが一瞬
「アノムスメハ…タシカ…」
反射的に身構えた。いつでもお札を出す準備は出来ている。
「あの子は私の友人の麻弓です。とっても良い子なのよ」
「ナゼマダイキテイル?ハヤク、トモダチニシナサイ…」
サキは首を横に振った。
「私が約束したのは100人までですよ。麻弓を入れなくても達成
胸の前で手を合わせ、おねだりするサキ。今までとのギャップに少
「ソウカ…ワカッタ。デハ、アタマヲダシナサイ……」
サキはカクマに近づき、目を閉じて小さくお辞儀をするような格好
このまま黙ってサキが食べられてしまう所を見ているわけにはいか
「…………タリナイ」
どうしようか考えていると、カクマがそうぼやいたのが耳に入った
「どうしたのですか?」言いながらサキは不安そうにカクマを見上
「サキ…ウソハヨクナイナァ……アトヒトリ…『トモダチガタリナ
カクマは目をカッと見開く。たったそれだけでサキの体が2mくら
「そ、そんなはずはありません!たしかにさっき、最後の1人を吊
たぶん浅山さんのことだろう。恐らく戻ってこなかった私を探して
「ハシノシタハカワダ…ウンガヨケレバ、タスカッテシマウ……ダ
目を細めて、足下で惚ける少女を見つめるカクマ。
「あ…あ……も、申し訳ございません…」
サキは歯をガチガチ鳴らし、身震いしながら許しを請う。それを見
「………ソウダ…ココニイルジャナイカ……サイゴノヒトリガ」
その鋭い目は、今度は私に向けられた。車内で寝ている時に襲って
「サキ…イマココデ、アノムスメヲトモダチニシナサイ。ソウスレ
「麻弓を、友達に………………」
サキは一瞬、私の方を見てすぐ下を見た。しばらく沈黙が続く。
「ドウシタ?デキナイノカ…?」
大げさに首をかしげたカクマは「チカラヲカソウカ」と続ける。サ
「大丈夫です。やってみせます」
そう言って一歩ずつゆっくりと私の方へ近づいてきた。近づきつつ
「前は首を絞めるなんて、じれったいことしたせいで逃げられちゃ
家でゴキブリを仕留めるときのように、じりじりと私との距離を詰
「さあ!私とカクマ様のために、その命捧げなさい!!」
後3mくらいのところで、サキは走って距離を詰めてきてその勢い
「!?」
サキが一瞬ひるんだ隙を見て、逆に間合いを詰めてサキの華奢な体
「麻弓…!?離せっ……!離せぇ!!」
腕の中でもがくサキの耳元に、そっとくちびるを近付ける。そして
「アマチ・タナヒ…」
サキ…あなたは本当は優しい子なんだよね…?
「コタマチミセラ…」
公園で遊んだときの楽しそうな笑顔…ずっと覚えてるよ…
「ワ・ロト…」
井川さん…いやお母さんも、あなたの帰りをずっと待っているから
「イマケ」
だから、お願い、元に戻って。
呪文を言い終わった瞬間、サキの体が真っ白な光に包まれた。腕を
「ウ…ク…アアァァ……イ…イイィィイィ……」
サキは頭を抱えて、身をよじらせている。彼女自身も、自分の中の
「サキ!」
私は大切な友達に駆け寄り、腕の中に抱きかかえ、何度か名前を呼
「………………ま、ゆ、み……?」
薄目を開け、弱々しい口調で私の名前を呼んだその表情は、年相応
「サキ…サキ…本当に良かったぁ……!」
私は力一杯、大切な友達の体を抱きしめる。サキがこの状況を理解
To be continued...