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日記・好きな事の考察や感想・オリジナル小説等を書いていきます。

オリジナル小説『友達100人できるかな?』第10話

これはおじさんのオリジナル小説です。

毎週水曜日の21時更新を予定しておりますので、暇つぶしに良かったら

見てってくださいまし。

*前回のあらすじ*
サキを解放して怒るカクマから逃れるため、麻弓とサキは2人で小屋の中に入った。そこでサキが自分の過去とカクマを封印する作戦を話し、薄い望みに賭けて小屋を出ようとしたとき、サキの体がバラバラに崩れてしまう。1人カクマと対峙する麻弓に、彼が呼び出した配下のゾンビが襲いかかろうとせまる。その時、光をまとったサキが麻弓の前に現れた。

第10話 <最高の友達>

 サキは呆気にとられている私の方を向くと、にっこりと微笑み

「良かった…間に合って」と呟いた。

「サキ、あなた一体…」

 どうしちゃったの?と言う前に、サキは私から少し離れて、周りを取り囲んでいるゾンビ達に近づいていく。1人のゾンビの額に自分の指を置くと、少し間が空いてゾンビの頭から白い煙のようなモノが天に昇っていき、続けて体がまるで砂で出来てたみたいにボロボロになって風に乗って跡形も無く消え去った。
 同じ事を他のゾンビにも繰り返す。10人くらいいたゾンビの群れが、次々とその数を減らしていく。怒りに燃えているカクマが、サキを止めようと凄い勢いでこちらに向かってきた。とっさに私はサキのそばにいき、お札を取り出して身構える。思った通り、お札から発せられる光にカクマは動きを止め、一定の距離から近付けなくなった。

「ありがとう、麻弓」

 サキは前を向いたままゾンビ達を消しさる手を止めないけど、その横顔は笑っているように見えた。そうこうしているうちに、ゾンビの人数は残り2人になっていた。

「ナラバ…フタタビクラウガイイ…!」

 今度は『カマイタチ』を放とうと両手を広げるカクマ。あのつむじ風はかなりの早さだけど、まっすぐにしか進まないから真横に避ければ大丈夫な事は学習済みだ。カクマの両手から突風が放たれ、私はその瞬間全力で横っ飛びして逃げる。でも、ゾンビ浄化に集中しているサキは避けられそうもない。

「サキ、危ない!」

 凄まじいスピードでつむじ風は突っ込んできて、とても助けに行く余裕は無い。あっという間につむじ風はゾンビとサキに到達し、そのまま私たちの背後にあった小屋に当たり壁の一部がバラバラと崩れる。つむじ風をもろに食らったゾンビの体は跡形も無く飛び散った。一方サキの体には傷1つついていない。

「手間が省けたわ」そう言って両手を軽くはたくサキ。

 どうやら今のが最後の1人だったようで、カクマは悔しそうに歯ぎしりをする。

「サキ…ソノチカラハ…マサカ…!」

「そう…コウノスケから授かった守人の力。私がカクマ様の所に長くいたおかげか、麻弓に比べると少し強力になったようね」

 自信満々に口角をあげるサキを横目に、私は目の前の状況を理解するのに時間がかかっていた。サキは今、一体どんな状態になっているんだ?彼女の体はさっき小屋で崩れ落ちたはずなのに…それに『カマイタチ』が直撃しても、無傷ですり抜けていったようにも見えた。

「体が崩れてくれたおかげで…あの子にまた会えた。私、あの子に『絶対カクマ様を封印する』って約束してきた…だから、これでもう終わりにしましょう……麻弓!」

 必死で考えていた私に、サキが大声で呼びかける。私は我に返って彼女の顔を見た。

「これから何があっても、躊躇しないで私についてきて!」

 その表情は、なんだかこわばっているようにみえた。

「ねえ、一体どういうこと!?」

 戸惑う私を置いて、サキは凄い早さでカクマの所に向かっていく。あまりの早さにビックリしたけど、よく見たら足が全然動いてなかった。つまりあの子は、少しだけ宙に浮かんでいるようだ…いや、呆けている場合じゃ無い。彼女の後をついて行かなくては…。私は既にカクマの元へ辿り着いたサキを追って走り始める。
 遠目からだけど、サキは両手を前に出して、カクマを押しているように見えた。カクマも、同じような格好で対抗している。サキの3歩後ろくらいまで来たら、2人の間に薄い膜が張られているようになっているのが見えた。サキの方が白、カクマの方は黒。お互い微動だにしないけど、なんとも言えない迫力が伝わってくる。

「麻弓、お札を前に出して!」

 私が来たことに気づいたサキが、前を向いたまま指示する。言われたとおりお札を前に突き出すと、カクマが2mくらい下がった。その分サキが前進する。

「……私が動きを止めて、麻弓が圧す。2人じゃないと、出来なかった…」

 サキの表情は相変わらず硬い。だけどどことなく嬉しそうにも見えた。

「サキ、キサマ…ワカッテイルノカ?ワタシヲフウインスルトハ、ドウイウコトカ…!?」

「カクマ様、あなたには…感謝しています。1人で心細かった私に、優しい言葉をかけてくださった。操られていたけど『あなたに仕えるという使命』が、私に生きがいのような物を与えてくれました」

 サキが少しずつ前に出る度、私も一歩、また一歩と進んでいく。そうするとカクマは同じ距離を保ったまま下がっていく。まるで磁石の同じ極同士が反発し合うみたいに。

「コノママフウインスレバ…ワタシノチカラハカンゼンニウシナワレ、キサマハカクジツニ『ジゴク』イキダ……ソレハイヤダロウ?」

 え、今なんて言った?『地獄』?サキが地獄に行くなんてそんな馬鹿な…驚いて目を見開いた私とは対照的に、サキの表情は一切変わらない。

「…イマナラマダユルシテアゲルカラ、ジュツヲトキナサイ…」

 気づいたら、戸が半開きになった祠の目の前まで来ていた。後ひと押し…というところで、サキが歩みを止めたので私も立ち止まる。長い沈黙の後、彼女はゆっくりと口を開いた。

「…………………………構いません」

「ナ、ナンダト!?」

 カクマと同じくらい、私の体にも衝撃が走った。

「私は、操られていたとはいえ、沢山の人を殺しました。コウノスケのように意志が強ければ、そんな過ちはしなくて済んだのに……あなたにも、ずっと良いように使われてしまった。全ては、私の心が弱かったから………だから、その報いはちゃんと受けるべきだと思っています」

 私は大きく生唾を飲み込んだ。耳元で聞こえたかと思うほどの大きなヤツだ。11月の深夜の山奥だというのに、全身から汗が噴き出してくる。一歩、サキはカクマとの距離を詰めた。

「ヤメロ…ソレイジョウ……チカヅクナ……」

 サキが持つ堅い意思、気迫のようなものに、あきらかにカクマは恐れおののいている。さっきまでの妖しい威厳は一切感じられない。また一歩、カクマとの距離が縮まった。

「カクマ様……あなたも一緒に堕ちて、罪を償いましょう」

 サキは更に一歩、足を踏み出す。お札の効力が発揮出来るスペースが確保できたが、私もサキの迫力に圧倒されて思わず進むことを忘れていた。

「イ、イヤダ……ジゴクニハイキタクナイッ……!フウインモサレタクナイッ……!マタヒトリボッチニナルナンテ………イヤダイヤダイヤダッ!!」

 カクマはまるで幼児になったかのように首を横にふった。そのなんとも情けない姿を見て、私は(ああ、カクマも私たちと同じだったんだな…)とぼんやり考えた。
 覚悟を決めた少女はもう一歩、前に出る。いつの間にか2人の間に張られていた膜は消えていて、サキが手を伸ばせば届く距離に、カクマは迫っていた。

「イヤダ、イヤダ、イヤダ、イヤダ…モウイヤダッ!クラクテツメタイ、アンナバショデマタ、ヒトリボッチニナンテナリタクナイッ!!」

 カクマはぽろぽろ涙を零していた。最初見たときはやつれた成年ぐらいに感じられた顔が、今は私たちよりも幼く見える。おもちゃ売り場でだだをこねる子供のように暴れるカクマを、サキは包み込むようにそっと抱きしめた。

「………安心してください。私が、ずっと一緒にいます。カクマ様は……独りぼっちなんかじゃありません」

 そう言うと、2人は小さな光の玉になり、まとめて祠の中に飛び込んだ。その瞬間、目も眩むような閃光が祠の中からほとばしる。

「ウワアアアァァァァァ!イヤダアアアアアアァァァァァ!!」

 中からカクマの絶叫が聞こえる。祠がガタガタと激しく揺れる。目の前の光景に驚くばかりの私に、祠の中からサキの声が聞こえてきた。

「麻弓、何してんの!?早くお札を貼って!!」

「で、でもそうしたらあなたが…」…そこから先は、言葉にしたくなかった。

「私は、ずーっと前に死んだの!だから、いくべき場所に、いくだけなのっ!!」

「ううぅ…でも、でもぉ…」

 お札を握りしめる手が震えていた。私がお札を貼ってしまえば、サキは…サキは……!

「お願い!カクマ様を止めていられるのも、あとちょっとだけなの!私が力尽きたら、もう誰も止めることが出来なくなってしまう……!!」

「あ、ああぁ…………」

 さっきから声にならない声ばかりが出る。気づけば手だけで無く、口先から足下まで、全身くまなく震え上がっていた。

「もう、限界…だから、早くぅ……」

 祠の振動がより激しくなる。今にも壊れそうな勢いだ。……………ここで私がビビって封印するのをためらうって事は、サキの『償うという決意』を踏みにじることになるんじゃ無いか?それだけじゃない。コウノスケ君の想いも、裏切ることになってしまう。何より、カクマを封じ込めるチャンスは、今以外あり得ない……………………覚悟が決まったら、全身の震えが止まった。

「……………サキ、私やるよ」

 ゆっくりと祠に近づいていく。

「そう、それで良いの…」

 戸に左手をかけ、右手にお札を構える。

「ありがとう………麻弓、あなたは…」

 力を使い果たしかけているのか、サキの声はずいぶん弱々しくなっている。彼女が何を伝えたいか、すぐわかった私はかぶせるように想いをぶつける。

「私も……サキ、あなたは…」

 何十年もずっと開いていた戸が、閉められた。

「………最初で最高の、友達よ」

 戸をまたぐようにしてお札を貼った瞬間、祠から漏れていた強烈な光が内部に収まっていき、一瞬あたりがまっ暗になった。続いて中から凄まじい風が吹いて、私の体ははるか後方へ吹っ飛ばされた。



 ……………………闇と静寂が辺りを包んでいる。

(……………おねーちゃん、おねーちゃん!)

 誰かが私を呼ぶ声がする…。

(おねえちゃんのおかげで、カクマさまがつくったせかいがこわれて、でてくることができたよ!)

 この声、聞いたことがある…でも誰だろう?思い出せない…。

(もうすぐじょうぶつしちゃうから、ぼくのこともわすれかけてるだろうけど、ぼくはずっとおねえちゃんのこと、おぼえてるから!)

 誰なのかも思い出せないまま、声は少しづつ遠ざかっていく。

(ぼくはあっちで、サキやカクマさまのことずっとまってるよ……!おねえちゃんもしんだら、またあおうね!……なるべくおそくがいいかな!?)

 声は、無邪気に笑った。この笑えない冗談は確実にどこかで似たような事を聞いている。それは確かなのに、どうしても思い出せない。それどころか、声そのものもテレビの音量みたいにどんどん小さくなっていく。

(……………じゃあ、そろそろいくよ…………ほんとうに、ありがとう…!まゆみおねえちゃん……!)

 光の玉が、天に昇っていく……そんな気が一瞬したけど、すぐに再び闇と静寂が支配する空間に戻った。結局誰の声だったんだろう…?



「………おい!大丈夫か!おい!」

 体が激しく揺さぶられている。闇と静寂を保てなくなった私は、重いまぶたをゆっくりとこじ開ける。目の前にオレンジ色のダウンジャケットを来たおじさんが飛び込んできた。意識がだんだんはっきりしてくると、どうやら私はおじさんに抱きかかえられている状態になっていることがわかった。

「お、目を覚ました。みんなー!女の子が目を覚ましたぞー!!」

 おじさんの呼びかけで、その辺に散っていた人たちが5人ほどわらわらと集まってきた。それぞれ赤、青、緑、黄色、桃色のダウンジャケットを纏っている。戦隊モノかよってちょっと思った。

「おお、良かった良かった」「ノボルもこれで安心だねぇ」「君、怪我はないかい?」「大変だったろう…こんなに汚れて…」「それにしても酷い有様だな、ここは…」

 それぞれが思い思いのことを一斉にしゃべるので全くまとまりが無い。結局誰の言葉も頭に入ってこなかった私は、目の前の情報から整理することにした。
 私は祠のあったところから、壁が崩れた小屋の中まで吹っ飛ばされていた。全身に藁がまとわりついており、おそらく藁が溜まっている所に突っ込んだのだろうと推測できる。そのおかげかたいした怪我もしていなさそうだ。目が覚めたばかりなので、感覚が鈍いだけかも知れないけど……。

「あの、あなたたちは一体誰ですか?」

 私は抱きかかえてくれていたおじさんの手を借り、ヨロヨロと立ち上がった。

「僕らは、浅山昇と同じ登山グループのメンバーさ」

「君の事は、浅山からずっと教えて貰っていたよ」

「大したもんだよねぇ、こんな山奥で1人でよく無事だった」

 ほっとくとそのままみんなわらわら喋りそうなので、私は次の質問をする。

「どうしてここがわかったんですか?」

 浅山さんと私は昨日さんざん迷い尽くした。どうしてこうあっさりと見つけることが出来たんだろう。

「あいつが君に渡した懐中電灯さ、遭難対策グッズになっていて、GPS機能がついているんだよね」

 青いジャケットのおじさんが答える。軽い衝撃を受けた。もしかして浅山さんって返して貰い忘れたんじゃ無くて、わざと私に渡したままにしてくれていたの?でもあれ?でも山の中じゃずっとスマホが圏外だったり、GPS機能付きのカーナビやマップは一切役に立たなくなっていたはずだ。

「効いたんですか?GPS」私はおじさん達に尋ねた。

「うん。浅山くんからは『多分使い物にならない』って聞いてたけど、何の問題も無く使うことが出来たよ。なんで彼が3週間も迷っていたのが不思議でならない」

 続けて黄色のおじさんが答える。また衝撃の一言を聞いた。浅山さんが3週間も迷っていただって?つまり今は…。

「すみません、今日は何月何日ですか?」

「その質問、ノボルも同じ風に聞いてたよ。今日は12月10日。ノボルが発見されてからは丁度10日経つねぇ」

 今度は桃色のおじさん…いや、おばさんが答えた。そういえば似たような経験を、夏休みにもしたなぁ…カクマが支配している山だったから、時間軸まで狂っていたんだろうか…?なんだか浦島太郎になった気分だ。

「浅山さんは、今どうしているんですか?」

「ふもとの病院で安静にしているよ。昨日やっと目が覚めたんだけど、全身の骨が折れてるから、しばらくまともに動けねぇなありゃ…」

「おい、子供にそんな話するなよ」

「おっとすまねぇ。まあ、致命傷はないらしいから安心しな」

 喋り過ぎてしまった緑色のおじさんはニカっと笑い、止めてくれた赤いジャケットのおじさんはやれやれと首を振る。個人的にはそれ以上の衝撃シーンを次々と目撃していたから、それほどショックじゃなかったけどとにかく浅山さんが生きてて本当に良かった……。

「これから君も病院にいって検査を受けることになるだろう。敷地の外に車があるから、一緒に行こうか」

 その先に車があるのだろう、オレンジジャケットのおじさんが小屋の外を指差す。

「はい………あれ?」

 歩き出そうとしたとき、私は気づいた。

「どうしたの?ちゃんと歩ける?」

「………いえ、何でも無いです」

 本当はなんでもあった。小屋にあったはずのモノが、無くなっている…。崩れたサキの体と、子供の白骨死体。壁に穴が空いたせいで、吹きつける風に乗って散ってしまったんだろうか?風といえば、カクマは風を操る男だった。2人の遺体が風に乗って散ったとしたら、なんだか彼を慕って、ついていったようにも思える。
 おじさん達に囲まれて小屋を出ようと出入り口まで来たとき、床に薄暗いシミが広がっているところがあるのを見つけた。そしてそのそばには、くまのぬいぐるみ。

「…………………………」

 私はそっとぬいぐるみを拾い上げた。

「……お嬢ちゃん?」

 薄汚れたぬいぐるみを大事そうに抱きかかえる私を、おじさん達が心配そうに見つめる。
くまの頭を何度か優しく撫でると、込み上げてきた思いを抑えきれなくなり、ぽろぽろと涙がこぼれ始めた。一旦そうなってしまうともう歯止めが効かない……私は声を上げてサキが残した大切なモノを濡らした。

 山には、穏やかな風が吹いている。

                                         To be continued...

ポルノグラフィティの『グラヴィティ』歌詞解釈してみた

今回はポルノグラフィティの名曲、『グラヴィティ』の歌詞解釈に挑戦したいと思います。


ポルノの歌詞は難解なモノが多いので考察されているファンも多いのですが、自分も興味があったのでここで定期的に発表できればなーと思います。

なお、歌詞解釈というのは人それぞれなので、「絶対こうだ!」とは言いません。
あくまで僕個人の考えということで、各々好きな考えを持てば良いと思います。

この曲は晴一が、作家であるいしいしんじの小説『ブランコのり』にインスピレーションを受けて書いたということで、歌詞解釈の前に本を購入し読破しました。

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

 

 
読み終わってから聴くとグラヴィティの魅力が150%増大されたと思います。
というか、僕が歌詞解釈するより本を読んで貰った方がわかりやすいかも知れません(爆)
本そのもののあらすじや感想は別記事にまとめるつもりです。

まあ、それだとこの記事を書く意味が無いので、本を読んだ上で自分なりの解釈を歌詞の頭から順に書いていきます。

 

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オリジナル小説『友達100人できるかな?』第9話

これはおじさんのオリジナル小説です。

毎週水曜日の21時更新を予定しておりますので、暇つぶしに良かったら

見てってくださいまし。

*前回のあらすじ*
丑三つ時になり、サキに電話をかけた麻弓だったが、既に100人殺しは達成されてしまったと聞いて諦めがよぎる。しかし最後の1人を殺し損ねていた事が判明し、代わりに麻弓を最後の1人にすべく襲いかかって来た。タイミングを見計らってくまのぬいぐるみを見せ、呪文を唱える事に成功し、ついにカクマの呪縛から解き放つことが出来たのだった。

第9話 <サキの過去>

 抱き合って喜びを分かちあう私たちに、殺意がこもった不快な風が吹いた。目を向けるとカクマが凄まじい形相でこちらを睨んでいる。

「…キサマ…ジブンガナニヲシタカ、ワカッテイルノカ…?」

 音も無く近づいてくるその姿に、私は恐ろしくなってその場から動けなくなってしまった。サキの手を借りてなんとか立ち上がれたけど、その間にカクマとの距離は目と鼻の先まで迫っていた。

「ムクイヲウケヨ…!」

 カクマは私の目の前に立ち右手を振り上げると、そのまま私の頭に向かって勢いよく振り下ろしてきた。もう駄目だと思い目を閉じた瞬間、わずかな風圧が頬を撫でた感触と共にうめき声が聞こえ、目を開けると先ほどよりも5mくらい離れた位置でカクマが頭を抱えている。

「麻弓…それ…」

 横で私を支えてくれているサキが指さしたのは、私の肩にかけられたポシェットだった。全体が淡い光に包まれており、開けると強烈な光が当たりを包み一瞬目がくらんだ。光っているモノを取り出してみると、それは少年の遺体から預かったお札だった。

「…アノコワッパメガ…ドコマデモワタシノジャマヲ…」

 やっぱりカクマはこのお札がある限り私に近付けないんだ。またあの少年に助けられてしまった。

「…ナラバ…!」

 距離をとったまま両腕を広げて唸るカクマ。何をしているのかわからずそのまま様子を伺っていると、

「麻弓、危ない!」

 とサキが叫んだ。言われて身を屈めるより早くサキから横に勢いよく押し倒され、その直後に私たちが立っていた場所を巨大なつむじ風が高速で駆け抜けていった。

「何あれ…」

 つむじ風が通った後の地面はえぐれ、軌道の先にあった木に大きな傷がいくつもつき、葉っぱが大量に舞い散っている。

「『カマイタチ』みたいなモノね…まともに当たると体が傷だらけにされちゃうか、突風でお札を落とさせようとしているのね」

 サキがえらく冷静に解説してきた。

「そんな…どうすれば良いの?」

 相手も近付けないけど、こっちも近付けないならどうしようもない。

「一旦離れて考えましょう。ソレ持ってれば直接触っては来れないから」

 サキの提案に、私は

「じゃあ小屋にいこ。あそこなら少しは風も防げるし」

 と返すと、サキは小さく頷いた。カクマの動きと、襲ってくる風に気をつけながら私たちは足早に小屋へ向かう。カクマは何度か『カマイタチ』を起こして来たけど、直接追いかけてはこない。お札の力で近寄れないからなのか、それとも何か別の狙いがあるのかはわからないけど、少し不気味だった。
 なんとか小屋まで辿り着き、扉を閉めると風の音がかなり小さくなった。でも、至る所からすきま風が吹いたり、たまに屋根や壁がガタガタ震えていて小屋自体がいつ吹き飛ばされてもおかしくない状態で安心は出来ない。

「麻弓…ありがとう。おかげで全て思い出せたわ」

 戸を閉める私の背中にサキが話しかけてきた。

「良かった…本当に…あ、そうだ」

 また泣きそうになっちゃったけど、その前に渡すものがあったことを思い出して、私はポシェットの中を漁り、くまのぬいぐるみを取り出してサキに手渡した。

「30年越しの再会だね」

「ええ…お帰りなさい…」右手に抱きかかえたクマを優しく撫でるサキ。

「どうしてはぐれちゃったの?」私は訪ねた。

「どうせなら色んな事を全部話そうかな…長くなるかも知れないけど良い?」

「私は大丈夫だけど、カクマが襲って来ないかなぁ?」

「それなら多分大丈夫…あの人はきっと…」

 何か言いかけて、サキは辛そうに頭を抑える。

「だ、大丈夫?」

「まだなんとか…じゃあ、私の全てを話すわね…」

 ついに30年前の真相が明らかになる…一言も聞き漏らさないよう集中してサキの声に耳を傾けた。

 



 〝ーーー30年前、学校から1人で帰っていると、知らない男の人に「道がわからなくなったので教えてくれ」って声をかけられた。行き先は…確か繁華街の方。私がその場で説明しても

「それじゃわからないから、車に乗って一緒に来て」って言われたの。嫌な予感がして、逃げようと思って振り返った時に隠れていたもう1人の男の人に薬をかがされた。

 気がつくと、私は車に乗せられていて…山の中を走っていた。隣に男の人が乗っていて「目が覚めたな」とか「大人しくしてれば痛くしない」なんて言ってきた。怖かったから何にも言えずに震えていたわ…そうしているうちに車が止まって、隣の男は私の体のあちこちを触ってきたり、服を脱がそうとしてきた。逆らったら殴られると思ったから、されるがままにしていたんだけど…運転していた男の方が私のランドセルの中を見てこう言った。

「君、井川紗希ちゃんって言うんだ…ってことは井川グループの娘さんかな?年の割に小綺麗な格好してるし、きっとそうなんだよね?たくさんお金くれそうでラッキー」って…。私は何も言えず、心の中で「誰か助けて」ってずっと叫んでいた。

 ランドセルの中を見ていた男が、隠していたぬいぐるみを見つけて

「駄目だよ紗希ちゃんこんなもの学校に持ってきちゃ」って言って窓からぬいぐるみを投げ捨てた。

 何よりも大切にしていたぬいぐるみをそんな風にされて、とても嫌な気分だった。後先考えないで私の口を抑えてた男の指に噛みついて、痛がってる隙にドアを開けて外に出て、ぬいぐるみを拾った。そうしたら噛みついた男に後ろから捕まって、運転してた男が私からぬいぐるみを取り上げると

「こんな幼稚なモンでいつまで遊ぶつもりだよ。2度と取りに行けないよう崖にでも捨てたら、諦めるだろ」

 ってガードレールの方に歩き始めた。後ろで私を抑えていた男の足を思いっきり踏んづけて、痛がって手を離した瞬間にガードレールに向かう男を止めようと走った。捨てられる前になんとか追いついた私は、投げようとしている男の腕にしがみついた。男が振り落とそうと腕を思いっきり振ったら…私はぬいぐるみと一緒に崖下に墜ちていった。

 …そしてカクマ様と出会って、力を授かった私は誘拐した2人をまず殺した。最初は抵抗あったけど、私はあの2人がどうしても許せなかった…。やってみると案外あっけなかった。それでためらいがなくなっちゃって、私は次々と人を殺していった。コウノスケも「辞めて」言ってたし、私自身も心のどこかじゃ辞めた方が良いって思ってたんだけど、あの頃の私にとってはカクマ様の言うことが絶対だったから、身も心も、あの人に捧げていた。
 30年間で95人くらい殺した頃に、麻弓…あなたに出会った。あなたは私と同じような心を持っていた。独りぼっちで…寂しそうな心。もしかしたら友達になれるかも知れない、そう思った。でも、自分はこんな体だし、カクマ様に命令されたら殺しちゃうかも知れない…そう思うと、なかなか話しかけられなかった…何度も何度も様子を見に来て、ようやくあなたの方から声をかけてくれたとき…とっても嬉しかった。
 一緒に遊んでみると、あなたは私とは違った。友達が出来ないって言ってたのが不思議なくらいに、元気で明るかった。一緒にいるとこっちまで楽しい気分になれたの。だけど、遊んでる途中でやっぱりカクマ様が命令してきた。「ソノコヲトモダチニシナサイ」って。命令されるともう自分の意思ではどうすることも出来なくて、せめて自分が落ちた崖まで連れて来たかった。私いつも誰かを殺すときは自分から突き落としたり絞め殺したりするんだけど、あなたにはそれはしたくなかった…でも命令はこなさなきゃいけない。だから幻覚を見せて、誘い込むことにしたの…。

 それが『友達にはなりたいけどトモダチにはさせたくない』って思ってた私のせめてもの抵抗。あのおじさんがいなかったら、今頃一緒にカクマ様の友達作りを手伝うことになってたわ。

 あなたと別れてからの私は、今までよりも「助かりたい」と強く思うようになった。だからカクマ様の目を盗んで電話したり、小屋までの道を案内したりして、何とか私まで辿り着いて貰えるように動いた…1度カクマ様に操られた状態で会っちゃって、本気で殺そうとした事もあったけど…。まさか本当に私の事を探しに来て、取り戻してくれるとは思ってなかったーーー〟

 



「…そんな事があって、こうして今2人小屋の中でカクマ様をどうしようかと考えているというわけ…終わり」

 サキの30年を凝縮した濃密なエピソードが終わり、思わず拍手してしまった。あの少年の名前がコウノスケって言うのも始めて知った。

「じゃあ後は…カクマをどうやって封印するか、それだけなんだけど…」

 私は腕を組んで考える。

「考えがあるわ」サキは自信ありげに言った。

「カクマ様は、光が嫌いなの。強い光で照らされると、光が入らない所に逃げようとするわ。それを利用して、2人でうまく祠まで誘導して、戸を閉めてお札を貼る」

「そんな簡単にいくかなぁ」私は首をかしげた。

「これしかないんだからしょうがないでしょ。他に何かある?」

 自分を取り戻したサキは意外と口調が強い。

「わかったよ。でも光って言うと今はコレしか無いよ」

 私は自分のスマホと、懐中電灯を取り出した。

「後はお札か…じゃあ私が懐中電灯を持つわ。麻弓はお札とソレ持って、カクマ様を挟みうちにして交互に光を当てることで祠まで追い込みましょう」

「まるでサッカーの壁パスみたいね」と私は頷いて懐中電灯を渡した。

「お札を持ってる麻弓には近寄れないから、カクマ様は『カマイタチ』を使ってくると思うの。もしそうなったら体がズタズタにされないようにがんばって避けてね」

「う、うん…」想像して冷や汗が垂れた。

「まあ、私はもう死んでる体だから、どれだけ傷つこうが関係ないけどね」

 そのジョーク、私はどんな反応をすればいいんだろう。自分を取り戻したサキのキャラがイマイチ掴めない。中途半端な笑い方で突っ込みを考えていたら、サキが続けた。

「良い?いっせーのーでで飛び出して、カクマ様の左右につくわよ」

 急に真面目なトーンになり、私も真剣な顔で頷いた。張り詰めた空気…一瞬、風の音がやんだような気がした。

「「いっせーのー…」」

「で!…ってアレ?……サキ!どうしたの!?」

 最後のかけ声を叫んだのは私だけだった。タイミングが狂った私は、サキの方を見ると、頭を抑えて苦しそうにしていた。心配して彼女に駆け寄り手を握る。

「私…もう駄目みたい…」

 サキはそう言って私の胸のあたりに顔を納めると

「…心臓の音、懐かしいなぁ」

 と呟いた瞬間、全身が一瞬で腐り果て、足下からボロボロと崩れていく。一瞬何が起こったのかわからなくて呆然としたけど、彼女の腐敗した手を自分が握っているのを見て、今まで出した事が無いような悲鳴をあげた。

 何故だ?何故サキの体は崩れた?カクマの仕業か?思わず外に飛び出した私の目線の先に、カクマが威風堂々と立ち尽くしていた。

「ソロソロダトオモッテイタヨ…」

 口が耳元まで裂けた気味が悪い笑みを浮かべている。

「サキに何をしたの!?」私は叫ぶように聞いた。

「フッフッフ…トイウコトハ、アイツノカラダモゲンカイヲムカエタッテコトダネ…」

「答えて!なんでサキの体が崩れたの?アンタが変な術使ったんでしょ!?」

「ギャクサ…『ナニモシナカッタ』カラ、サキノカラダハクズレサッタ…アタリマエダヨナァ…イママデワタシノチカラデ、ニクタイヲツナギトメテイタノニ…オマエガムリニカイホウシタカラ…ワタシノジュツガカンゼンニキレタノサ…ツマリ、サキガホロンダノハ、オマエノセイナンダヨ…!」

 カクマは夜空に向かって大声で笑い、私は膝から地面に崩れ落ちた。

「そんな…私が…」

 深い絶望が私を包んだ。ここまでやってきたことを全て否定されたような感じだった。よく考えれば、サキが30年前に既に死んだ事がわかった時点で、こうなることは予想できたのかも知れない。でも、さっきまで会話していた友達が、一瞬で腐り果てるなんて、それが私のせいだなんて…。

「オマエヲショケイスルトシテ…ワタシハ、オマエニチョクセツチカヅクコトハデキナイガ、カゼヲオコスコトデ、ソノミヲキリキザムコトモデキル…ダガ、モットオモシロイショケイヲオモイツイタ…」

 再びカクマの口角がつり上がっていく。右手を高々と上げ、盛大に指を鳴らすと、辺り一面に吹いていた風がピタリと止んで、次第に四方から犬が唸るような音が聞こえてきた。目を凝らして音を鳴らしている正体が見えた瞬間、顔面から血の気が引いた。
 それは、白目をむいた人間の群れだった。全員体のあちこちから血を流したり、皮膚の一部がなくなって骨や内臓が飛び出している。だらしなく開いた口からうめき声を上げ、手を前に出してノロノロとこちらへ向かってくる。

「サッキ、オマエタチガカクレテイルアイダニ、チカバニイタトモダチヲアツメタンダ…」

「あ…ああ…」ゾンビと同じように、私もうめき声をあげていた。足が震え始めたと思ったら、その震えはもう全身にまわっていて、止めることが出来ない。歯までガチガチ鳴っている。

「カレラモ、オマエノヨウスハズットミテイテネェ……トモダチニシタイト、オモッテイタミタイダネェ…」

 山で感じていた妙な視線の正体はこれだったのか。いまさらどうしようもないけど…それにしてもニヤニヤといやらしい笑みを絶やすこと無く浮かべているカクマは本当に腹が立つ。あれは本気で人を殺すことを楽しみにしている顔だ。

「ダカラ、チョウドイイトオモッテカレラニ『トモダチヅクリ』サセルコトニシタヨ…マア、ワタシノジャマヲシタオマエナンカ、イラナイカラスグ『ハザマ』ニトジコメルガネ…」

 『ハザマ』とは恐らくコウノスケ君が閉じ込められている場所の事だろう…このどうしようもない悪霊は、好き勝手に人のこと操って殺しを楽しんで、気に入らない奴はどこにも行かせないように自分が作り出した空間に閉じ込める…本当に最低だ。反吐が出る。
 そうは思っても、もう自分ではどうすることも出来ない、私の周りは既にゾンビが取り囲んでいて、もういつ襲いかかられてもおかしくない状態だ。カクマがあれだけ自信があると言うことは、おそらくゾンビ達に対してはお札は意味が無いのだろう。逃げたところでカクマの『カマイタチ』が待っているし…何よりたった1人じゃ封印なんて出来るわけが無い。駄目だ…完全に終わった…。悔しくてたまらなくなった私は俯いて、下唇を噛んだ。

「サア…ワタシニサカラッタコトヲ、トワニコウカイスルガイイ!!」

 カクマの一声と共に、ゾンビ達がひときわ大きいうなり声を上げて私に覆いかかってきた。私はギュッと目をつむって歯を食いしばり、せめて痛みが一瞬で過ぎる事を願った。しかし、ゾンビ達は醜いうめき声を近くで浴びせるだけで、いくら待ってもその痛そうな爪や凶悪な歯で私に襲いかかってくる気配が無い。

「ソンナバカナ…キサマハ…!」

 カクマがうろたえている。一体何があった?恐る恐る目を開けると、私もカクマと同じようにうろたえてしまう。
 私の目の前には、白い光をまとったサキが立っていた。

 

                                         To be continued...

さすがの菅野

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昨日は東京ドームで巨人ー広島戦を立ち見ですが観戦してきました。
先発投手が防御率トップの菅野と勝利数トップの大瀬良というガチエース対決だったので、衝動を抑えることが出来ませんでした。

東京ドームは昨年の巨人ーロッテのオープン戦にフラッと立ち寄って以来ですが、やっぱめっちゃ広いですね。
晴一が東京ロマンスポルノで「東京ドームの広さを例えるなら、東京ドーム1個分」という名(迷)を残してましたが言い得て妙ですね。

巨人の注目は今季初の組み合わせらしい2017年ドラフト3位の大城と菅野の東海大バッテリー、セカンドでスタメン入りしている田中広輔の弟である2017年ドラフト5位の田中俊太。兄が焦るほどの活躍を期待していますよ。

個人的には鈴木誠也を現地で見るのが昨年7月の甲子園以来で、あれからもう1年経ったのかと時の早さに驚きつつも、怪我から完全復活して4番スタメンに舞い戻り元気にフィールドを駆け回っている姿に涙ちょちょぎれますね。

まあ1番の注目はなんといっても両エースの投手戦!どっちかのホームラン1本で決着が付くんじゃないかと個人的には予想しておりました。

試合結果がこちら

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なんか写真うまく撮れんかった…

(悲報)カープ、完封負け

試合が動いたのは6回裏坂本の2ランホームランでした。
予想が悪い方向で当たってしまいました。
カープも誠也の2塁打や西川の3塁打と、良い当たりは何度もあったんですが、得点圏まで走者を進めた時の菅野のブーストっぷりが本当に凄かった。

2回二死2塁で野間三振
5回二死1、3塁で広輔セカンドフライ
6回二死3塁で松山三振
7回無死(!)3塁から野間サードゴロ→會澤三振→新井さんショートゴロ

と得点のチャンスをことごとく崖っぷちで潰されてしまいました。
さすがの菅野。

全体的に締まった良い試合だったんですが、6回の広輔のファンブルと8回の會澤の悪送球はいただけませんねぇ。どっちも得点に絡められてますからね。
リーグ優勝の先、日本一を目指すためには小さなミスを1つでも減らしていって欲しいです。

 

※ここからやや不愉快な要素を含めていますので白文字反転しております。

 

試合とは関係ないところなのですが、隣で観戦していた巨人ファンの老人老婆成人男性のグループがやたらうるさい上に、あらゆる場面で敵味方関係なくボロクソに野次ってました。

広島攻撃時に大声で投手を応援したり、ミスしたり三振した選手に「ザマーミロ」とか「バカ」とか「2軍落ちろ」とか言ったり、カープの応援に合わせて広島の選手を貶すような替え歌を歌ったりと不快を絵に描いたような集団でした。

グループにいたガリガリメガネ童貞はチラチラこっちを見てきやがるし、得点が入ると柵に乗り上げて他の巨人ファンとグーパンするし、挙句ゴミは持って帰らんし…。

普段彼らがどんな楽しみ方してるのか知りませんけど、野次飛ばしたいならもっと選手に近い席買いなさいよと。騒ぎたいなら外野応援席行きなさいと。金銭の問題か席がなくて買えなかったのであればそれ相応の楽しみ方で大人しく観戦しとけと。

最も安上がりだから立ち見で、かつ騒ぎたかったと言うならもう最悪の極みですよ。

野球見にきてねぇだろ、お前ら。ストレス発散したいだけなら居酒屋かカラオケにでも行ってろや。

 

はい、毒吐き終わり♡

 

読んで不快に思われた方、どうもすみませんでした…。

どうしても我慢が出来なかったもので、書かずにはいられませんでした。

 

偉そうに書きましたけど、気づかぬうち自分が周りに迷惑をかけているということは大いにありえますから、周りに配慮しつつ楽しんで観戦したいですね。


今回敗戦ということで、個人的な現地観戦の戦績は2勝5敗、勝率28%…。
今季に至ってはまだ勝率0%です。(4月のヤクルト戦と2回しか行ってませんがね)

そろそろぶちスカッとする勝ち試合がみたんじゃあ~!!

次は頼むぞ、広島東洋カープ
がんばれ広島東洋カープ

最近さあ…

最近日常系の投稿サボってんなぁ~と反省する今日この頃であります。

いや書きたいネタは大量にあるんですがね、なかなか机に向かって集中するという事が難しいです。目の前に資料検索に便利な箱があるんですが、便利すぎるがゆえについ検索してしまうんですよね…youtube、なんJ、XV(ry

 

そんな感じで、気がついたらあっという間に1日が過ぎ去っています。

長期旅行、合わせて退職からも早くも1ヶ月が経とうとしております。

 

大森晃(元々々おさる→元々モンキッキー→元おさる→現モンキッキー)が

第17回スポーツマンNo.1決定戦に6年半ぶりに出場した際に、あえなく総合13位で撃沈してしまった際の印象的なコメント

 

「僕の周りの世界が、凄いスピードで前にいってましたね」

 

それがめっちゃしっくりくる日々だなぁとひしひしと感じております。

(つかおさるまたモンキッキーになってたのかよ…全然知らんかった(笑))

 

 

直近約1ヶ月で起こった時事ネタを箇条書きしますと

・麻原彰晃死刑執行

中四国大雨

・タイ洞窟救出作戦

野原しんのすけ声優交代

歌丸師匠閉幕

・W杯日本代表ベスト16

・関西そこそこ大地震

・ミソシタメジャーデビュー

・ポルノ新シングルがポケモン映画主題歌

・ジャニ関係のアレコレ

・日大タックル問題

等々…連日驚くようなニュースが世間で飛び交っています。

 

 

いや、多すぎるわ…。

 

 

軽く振り返っただけでこんなにあるんですよ?

これだけで1年の振り返りだって言っても納得してしまいそうなのにたった1ヶ月でイベント目白押し過ぎですよ。

 

中国の食事かわんこそばのように、止めどなく送られてくる情報の食べ放題に胃がもたれてきそう。

 

私的直近の出来事にはダーマ神殿に行ってみたり、パソコンを買い換えたり、強風で網戸がど派手にぶち破れたりといった事がありました。

 

1ヶ月前に書いた旅行で起こった出来事とかも書きたいです。

漫画、映画の考察・感想とかも書きたいんです。

 

本当に、本当に書くこと、書きたいことが山の如くあります。

もはや何から書いて良いのやら…という状態です。

 

しかし、冒頭で書いたとおり机に向かって集中するという事がなかなか出来なくて、自分で毎週水曜の21時更新だと宣言した小説ですら締め切りを平気で破り続けている状況で、だらしなくて情けないなぁと日々己を恥じております。

 

アレコレ言っててもしょうが無いし、自分で自分を背負う勇気を持つと覚悟した以上、立ち止まりながらも前に進み続けなくてはいけません。

 

 

自分のペースで、少しずつ消化していきたいと思っております。

オリジナル小説『友達100人できるかな?』第8話

これはおじさんのオリジナル小説です。

毎週水曜日の21時更新を予定しておりますので、暇つぶしに良かったら

見てってくださいまし。


*前回のあらすじ*
悪霊カクマに白い空間に閉じ込められたと語る少年は、麻弓にカクマ、サキとの関係を話す。その途中で麻弓が一度訪れた小屋にくまのぬいぐるみがあることがわかり、少年からサキの奪還とカクマの封印を依頼された麻弓。山の守り人としての力を預かり、1人で小屋に向かい丑三つ時を待つ。

第8話 <神様お願いします>

 少年から借りた力のお陰で、迷いなく小屋まで来れて目的のモノも獲得し、後はサキを取り戻してカクマを封印するだけ。たったのそれだけなんだけど、何時間も寒くて暗い闇の中に1人でいるとどんどん気分が落ち込んできて、不安が押し寄せてくる。最初気晴らしスマホを見たりもしたけど、ずっと圏外だからたいしたことは出来ないし、電池ももったいないのでアラームだけ設定してポシェットにしまった。
 鞄の中のお札がぼんやりと光ってはいるが、それだけだと心許ないので懐中電灯を立てて床に置き、目の前にワラを敷いてそこに座って身をかがめ目を閉じる。室内とは言え、11月の山奥で暖房なしはさすがに寒く、手に息を吐きかけたり、全身を何度もさすったりして暖をとっていた。強風が時折小屋の壁を揺さぶって戸がガタガタと震えたり、隙間風が下手くそな口笛みたいな音を鳴らす度に私はおびえた。
 暗くて、寒くて、独りぼっち…少年やサキも似たような気分を味わったのだろうか。そしてその不安で心細い気持ちを、カクマに利用された…確かにこんな状況で優しく甘い言葉をかけられたら、ほとんどの人は従ってしまうだろう。
 『友達作り』を実行させられたサキや他の亡くなった子、山で事故や自殺に見立てて殺された沢山の犠牲者。井川さんのように、行方不明者の帰りを待ち続ける家族も大勢いるのだろう。それを考えただけで私はカクマのことが絶対に許せない。そう考えると手が自然と堅い握り拳を作っていた。
 体育座りをして膝小僧に顔を埋めた状態が一番しっくりきて、その姿勢のまましばらく頭の中でカクマに対する怒りを反復させていると、ポシェットにしまったスマホが鳴り響く。カバンからスマホ取り出しアラームを止める。『午前2時』いよいよ決戦の時だ。
 立ち上がってから心を落ち着かせようと3回深呼吸し、意を決して着信履歴からサキの電話番号にリダイヤルをかける。

「麻弓…そこにいたのね」

 繋がった、と思った瞬間に向こうからサキの声が聞こえてきた。あまりの早さに一瞬声を失う。

「あなたに…嬉しいお知らせがあるの。もうすぐつくから、そのまま待っていてね…」

 一方的にそのまま電話は切れた。完全に出鼻をくじかれて、何も言えなかった。もうすぐつくということは、連絡しただけでこちらの居場所がわかったのか。それに関してはもうあまり驚かないけど、あっちから向かってくるというのは予想外で、どうしようかと少し焦ってしまった。
 風の音に混じって2回、ゆっくりと戸が叩かれた。間髪入れず音もなく戸が開かれると、色白で透き通った肌をした少女が現れる。吹きすさぶ闇夜に溶けこむように黒髪が舞い踊り、薄ら笑いを浮かべる顔やブラウスの白が宙に浮かんでいるように見えた。

「探したわ…いなくなっちゃうなんてひどいじゃない」

 言いながら一歩、また一歩と近づいてくる。足音は聞こえない。

「……………サキ、あなたは………」

 ぬいぐるみを見せて、少年に教わった言葉を言う。たったそれだけだ。でもその前に首を捕まれて殺されたらたまらない。それを警戒して、サキが一歩近づく度に私も同じように一歩ずつ後ずさりした

「安心して。もう麻弓は関係ないから」

 意外な言葉が飛び込んできた。

「どういうこと…?なにが…『関係ない』の?」

 恐怖でうわずりそうになる声を抑えようと、わざとゆっくりと話す

「私が麻弓に会いたかったのは、うれしいお知らせがあるからなの…カクマ様との約束をついに果たせた、その祝福をして欲しかったの」

(まさか、そんな馬鹿な…それってつまり、その…)

 上手く言葉が出てこない。思考をまとめようと頭を働かせていると、サキが嬉しそうにそのまま続ける。

「麻弓のおかげで、友達を100人作ることが出来たわ。本当に、ありがとう…」

 サキは口角を不気味に持ち上げ、深々とお辞儀をした。100人殺しを止めることが出来なかったのは悔しいけど、その上『私のおかげ』っていったいどういうこと?

「あなたは逃げちゃったけど…代わりに近くにいたおじさんに、友達になって貰ったから」

 聞いた瞬間、血の気が引き、全身の毛が逆立つ。頭の中が真っ白になって彼女が何を言っているのか理解できなかった。いや、本当は理解していたが、認めたくなかっただけかも知れない。

「…あの人、麻弓が連れてきてくれたのよね?」

 やめて。

「手伝ってくれて、ありがとう…」

 やめて。お願いだから、それ以上言わないで。

「あなたは本当に私の…大切な『トモダチ』よ」

「やめてっ!!」

 もう聞きたくない。頭を抱え、髪をかき乱して思い切り叫んだ。私のせいで浅山さんが死んでしまったなんて、認められるわけがないよ。

「…………なんで?なんでなの?」

 もう落ち着くとかそんな事を考える余裕はなかった。震えたって、うわずったって構わないから、気持ちをはき出さないと気が済まない。

「サキも、カクマってやつもおかしいよ!どうしてそんな簡単に人を殺せるの!?」

「私、友達を作っているだけよ。それがいけないことなの?」

 サキは少しも悪びれる様子なく小首をかしげ、そのまま話し続けた

「私は、私と同じ立場の友達を作っているだけ。どん底から救い上げてくださったカクマ様との約束は、絶対に果たさなくちゃいけないの」

 その約束を果たした先に、自分がどうなるのか彼女はわかっているのだろうか。

「もうすぐ、カクマ様がこの神社にやってくるわ。そうしたら、私は友達を100人作ることが出来たご褒美をいただくの」

 言いながら、嬉しそうに体を右へ左へ揺する。

「でも、100人殺してしまった魂は…」

 私が言い切らないうちに、サキは体を斜めにしたまま急に硬直し

「カクマ様に食べられちゃうんでしょ」

 光のない瞳で見つめて私の話を遮った。

「知っているなら、なぜ逃げないの?」

「だって逃げる必要なんかないもの。カクマ様と永遠に一つになれるなら、これ以上の幸せはないわ」

 不適に笑うサキを見て、私はうろたえた。まさかここまでカクマのことだけを考えているとは思わなかった。

「だから、カクマ様にお伝えする前に、麻弓に会っておきたかったのよ」

 自分がこれから食べられてしまう事を知っていたから、私に会いに来たというの?これが永遠の別れになるってそう言いたいの?それを聞いて、これはもしかしたら僅かに残された本当のサキからの救難信号のような気がした。

(今なら、まだ間に合うかも…)

 ダメ元で私はくまのぬいぐるみを差し出した。

「……?なぁに?それは……」

 サキは不思議そうにくまのぬいぐるみを見つめる。まさか覚えていないのか?いや、まだ諦めるのは早い、次は少年から教えて貰った呪文を唱えてみよう。彼のいうとおり、サキが元の姿に戻って欲しいと願いながら思い出すと、頭に言葉がスラスラと浮かんできた。

「アマチ・タナヒ・コタマチミセラ…」

 言い切らないうちに、突然凄まじい悪寒が体中を駆け巡った。

(この感覚……まさか…!)

 思わず呪文を止め、迫り来る嫌な感じへ神経を研ぎ澄ませる。

「ああ……いらっしゃったのね…!カクマ様っ…!」

 サキは振り返り、飛び跳ねるように小屋の外へ出て行く。私はぬいぐるみをポシェットの中にしまい、後を追って小屋を出た。外は目を開けるのも困難なほど暴風が吹き荒れ、草木がざわざわと騒がしい。まるでこれから現れる者へ歓迎の拍手をしているみたいに感じられた。辺り一面凄まじい風が吹いていたのが、だんだんと小屋の前に集まってきて竜巻のような状態になり、それが収まって来たら今度は風が人の形に見えてきて、完全に収まると夜の闇を更に暗くしたような漆黒の袴を纏った男が現れた。

「カクマ様………お待ちしておりました」

 サキが土下座の格好で丁寧にあいさつをしている。

「…サキ…ドウシタンダイ?」

 切れ長の瞳をサキの背中に向け、男は彼女に語りかけた。見た目からは想像できない優しい声だ。サキは頭を上げ、

「私、ついに友達を100人作る事が出来ました!やっとカクマ様との約束が果たせたのでお知らせしたかったんです!」

 と今まで聞いたこともないような可愛らしい声でハキハキと答えた

「ソレハ…ヨクガンバッタネ。ホメテアゲルカラ、タチナサイ」

「えへへ…ありがとうございます」

 頬を赤らめながら、ゆっくりと立ち上がる。その時、カクマが一瞬私の方を見た。

「アノムスメハ…タシカ…」

 反射的に身構えた。いつでもお札を出す準備は出来ている。

「あの子は私の友人の麻弓です。とっても良い子なのよ」

「ナゼマダイキテイル?ハヤク、トモダチニシナサイ…」

 サキは首を横に振った。

「私が約束したのは100人までですよ。麻弓を入れなくても達成しているんですから良いじゃないですか。それよりも、早くご褒美くださいよ。ねっ?」

 胸の前で手を合わせ、おねだりするサキ。今までとのギャップに少々混乱するが、どうやらサキは私を殺したくは無いようだ。そしてサキの意見を聞いて、カクマの目の色が少し変わった…ような気がした。

「ソウカ…ワカッタ。デハ、アタマヲダシナサイ……」

 サキはカクマに近づき、目を閉じて小さくお辞儀をするような格好になる。丁度子供が親に頭を撫でて欲しい時の姿勢に似ていた。カクマは腕を伸ばしてサキの頭に左手をかざし、自分の顔の前に右手を中指と人差し指だけを立てた状態で持ってくると、小さな声でボソボソ何かを呟き始める。するとサキの体から黒いもやが出始めて、私は(ああ、これがサキの黒くなってしまった魂なんだな)と悟った。
 このまま黙ってサキが食べられてしまう所を見ているわけにはいかない。何とかして彼女を助けて、カクマを祠に封印しなければ…でも、体が言うことを聞かない。今すぐ走り出して2人の間に入ってサキが食べられちゃうのを止めたいのに、頭の中は何度も「動け!」って命令してくるのに、地面から足に釘を打たれちゃったみたいにその場から一歩も動けない。カクマから漂う不穏なオーラに、恐怖心を抱いてしまった心が飲まれかけていた。

「…………タリナイ」

 どうしようか考えていると、カクマがそうぼやいたのが耳に入った。その直後、サキの体に黒いもやがじわじわと戻っていく。

「どうしたのですか?」言いながらサキは不安そうにカクマを見上げた。

「サキ…ウソハヨクナイナァ……アトヒトリ…『トモダチガタリイ』ヨ」

 カクマは目をカッと見開く。たったそれだけでサキの体が2mくらい吹っ飛び、背中を地面に強打した。

「そ、そんなはずはありません!たしかにさっき、最後の1人を吊り橋から突き落としてきたんですから…!」

 たぶん浅山さんのことだろう。恐らく戻ってこなかった私を探して、危険を承知で別ルートで崖下に向かおうとしたのだ。その途中、サキと出会ってしまったということか…でも『タリナイ』ってことはつまり……『生きている』ってこと?

「ハシノシタハカワダ…ウンガヨケレバ、タスカッテシマウ……ダメダネェ…チャントサイゴマデカクニンシナイト…ワルイクセダ」

 目を細めて、足下で惚ける少女を見つめるカクマ。

「あ…あ……も、申し訳ございません…」

 サキは歯をガチガチ鳴らし、身震いしながら許しを請う。それを見下ろすカクマの冷徹なまなざしは、何の感情も示していないように見えた。

「………ソウダ…ココニイルジャナイカ……サイゴノヒトリガ」

 その鋭い目は、今度は私に向けられた。車内で寝ている時に襲ってきた黒い影と、同じ目をしていた。

「サキ…イマココデ、アノムスメヲトモダチニシナサイ。ソウスレバ、サッキノシッパイハユルシテアゲルカラ…」

「麻弓を、友達に………………」

 サキは一瞬、私の方を見てすぐ下を見た。しばらく沈黙が続く。

「ドウシタ?デキナイノカ…?」

 大げさに首をかしげたカクマは「チカラヲカソウカ」と続ける。サキは

「大丈夫です。やってみせます」

 そう言って一歩ずつゆっくりと私の方へ近づいてきた。近づきつつスカートのポケットに手を入れ、中から大型のサバイバルナイフをとりだして右手で構える。登山家の持ち物から奪ったのだろうか?

「前は首を絞めるなんて、じれったいことしたせいで逃げられちゃったけど、今度は確実に心臓を貫いて、私と同じ『友達』にしてあげる…」

 家でゴキブリを仕留めるときのように、じりじりと私との距離を詰めてくる。私はサキから目を離さないまま、ポシェットを漁った。作戦は既に固まっている。後は、とっさに動く勇気とタイミングだけ失敗しなければ…。

「さあ!私とカクマ様のために、その命捧げなさい!!」

 後3mくらいのところで、サキは走って距離を詰めてきてその勢いのままナイフを私の心臓に突き立てようと振りかかった。鋭利な切っ先が眼前に迫るその時、私はくまのぬいぐるみを彼女の前に差し出した。

「!?」

 サキが一瞬ひるんだ隙を見て、逆に間合いを詰めてサキの華奢な体を腕ごと抱きしめた。こうすれば、ナイフは使えなくなるなと思っていた。カクマの力を借りていないサキなら力は普通の少女と同じだから、抑え込める自信はあった。もっとも、抱きしめた理由はこれだけじゃ無かったんだけどね。

「麻弓…!?離せっ……!離せぇ!!」

 腕の中でもがくサキの耳元に、そっとくちびるを近付ける。そして願いを込めて、ゆっくりと言葉を囁いた。

「アマチ・タナヒ…」

 サキ…あなたは本当は優しい子なんだよね…?

「コタマチミセラ…」

 公園で遊んだときの楽しそうな笑顔…ずっと覚えてるよ…

「ワ・ロト…」

 井川さん…いやお母さんも、あなたの帰りをずっと待っているから

「イマケ」

 だから、お願い、元に戻って。
 呪文を言い終わった瞬間、サキの体が真っ白な光に包まれた。腕を離して距離をとり様子を見る。サキの体の中からあふれ出す黒いもやを、光が吸い取っているように見えた。

「ウ…ク…アアァァ……イ…イイィィイィ……」

 サキは頭を抱えて、身をよじらせている。彼女自身も、自分の中の邪悪に取り込まれた部分を追い出そうともがいているのだろうか。しばらく身もだえた後、天を貫く大絶叫が真夜中の山に響き渡り、光が闇を連れて宙に舞い上がり消え去ったとき、少女はその場に力なく倒れ込んだ。

「サキ!」

 私は大切な友達に駆け寄り、腕の中に抱きかかえ、何度か名前を呼びかけ、体を揺する。

「………………ま、ゆ、み……?」

 薄目を開け、弱々しい口調で私の名前を呼んだその表情は、年相応の無垢な少女の姿そのものだった。それをみて安心したのからなのか、取り戻せた達成感からなのかはわからないけど、自然と私の目から止めることの出来ない涙が溢れてきて、サキの白くて柔らかい頬に当たって弾けた。

「サキ…サキ…本当に良かったぁ……!」

 私は力一杯、大切な友達の体を抱きしめる。サキがこの状況を理解しているかどうかはわからないけど、少しずつ感覚が戻ってきたのか、私の体を強く抱きしめ返してくれた。それが何よりも嬉しかった。

 

                                         To be continued...

オリジナル小説『友達100人できるかな?』第7話

これはおじさんのオリジナル小説です。

毎週水曜日の21時更新を予定しておりますので、暇つぶしに良かったら

見てってくださいまし。

*前回のあらすじ*
崖下で腐乱死体を目撃した麻弓はサキと突然の再会を果たす。感動の再会と思いきやサキは麻弓の首を締める。死が近づく中、井川さんの事を考える麻弓。するとサキは首から手を離して苦しみ始め、麻弓はその隙に逃げることに成功したが、今度は道に迷ってしまう。疲労と空腹で座り込んだ彼女の意識は再び白い空間に飛ばされていた。

第7話 <魂を取り戻せ>

 サキ達が友達を増やす=人を殺すことによってカクマにはどんなメリットがあるのだろう。私は少年に質問した。

「サキが『友達を100人つくることを約束した』って言っていたんだけど、100人…その、殺すと、どうなっちゃうの?」

 うつむいた少年は話すのをためらっているのかしばらく沈黙していたが、やがてぽつりぽつりと語り始める。

「………ぼくはいちどだけみたんだ。100にんともだちをつくったなかまのひとりが、まんげつのばんカクマさまにたましいをくわれるところを。カクマさまはまっくろにそまったたましいがだいこうぶつなんだ」

「どうして100人も?」

 1人でも100人でも恐ろしい行為に変わりない。そんなにたくさん殺すことに意味があるのか疑問だった。

「カクマさまはたましいのいろが、ひのひかりもささない、ほらあなのおくみたいなふかいやみのいろになるのをまっているんだ。ころせばころすほど、たましいはどんどんくろくなっていって、100にんでかんぜんなくろになる」

 買ったばかりの緑色が残るバナナに茶色い斑点がつくまで待つようなモノか。意外とグルメなんだな。なんてくだらないことを思ったけど、サキの言葉を思い出して焦る。

「ちょっと待って、サキ確か『友達を99人作った』と言っていたよ」

 記念すべき100人目に私はあやうくなる所だったのだ。首筋をさすると、冷たい手の感触が残っているような気がした。少年は目を見開き、残念そうにうつむく。

「だからいったんだ…サキのことはもうたすけられないって。そこまでともだちづくりがすすんでるとはおもわなかったけど…あのとき、やっぱりわたしておけばよかった…」

 握りしめた拳が震えている。私は少年に尋ねた。

「何を渡したかったの?」

「サキがともだちづくりになれはじめていたときに、ぼくサキにまえのやさしかったおねえちゃんにもどってほしくて、まいにちやまじゅうさがしまわってやっとみつけたんだ。サキがたいせつにしていたもの」

「それって、もしかして…くまのぬいぐるみ?」

 少年は驚いた顔で私の顔を見上げる。

「そうだよ。なんでしってるの?サキがここにきたばかりのときにはなしてたんだ。おかあさんからもらった、いのちよりもたいせつなたからものだったって」

「そんなに大切にしていたのに、なんで持っていなかったの?」

 井川さんの家で捜索願いを見た時から感じていた疑問だった。

「あんまりおぼえていないっていってたけど、やまでおとしたんだって」

 何かの拍子に落としたか、あるいは誰かに捨てられたか…どちらにしても、山の中をあてもなく探すのは途方もなく大変だっただろう。見つけてくれて本当に助かる。

「そのぬいぐるみは、今どこに?」

「このちかくにあるぼろごやのわらおきばにかくしてる。カクマさまにみつかると、けされちゃうから」

 小屋といえば、白骨死体があったあそこだろうか?ここである1つの考えが浮かぶ。

「まさかとは思うけど、君ってその小屋に体があったりしない?」

 一瞬ぬいぐるみを当てられたときと同じ顔をした少年は、次第に当てられたのがなんだか嬉しいようなそぶりを見せた。

「うん、うん。あそこでカクマさまにちからをうばわれた。ふういんしようとしたのがばれちゃったんだよね」

 照れくさそうに少年は頭をかく。

「だからお札を持っていたのね…ぬいぐるみをそこに隠したのも、なにか意味があるんでしょう?」

「さすがだね。ほんとうはあそこにサキをよんで、サキがやさしいこころをとりもどしたら、ふたりできょうりょくしてカクマさまをふういんするつもりだったから」

 でも実際はサキが来る前に、カクマが来てしまい握りしめたお札を見て少年の裏切りを悟り、逆に少年をこの白い空間に封印したという感じか…お札が残ってしまったのは、あれ自体にカクマは触れることが出来ないからかな?

「ねえ、おねえちゃん。ぼくいいことおもいついた」

 あごに手をあて考え事をしている私の肩を冷たい手がトントンと叩く。悪戯で背中に氷を入れられたみたいに思わずのけぞってしまったこの少年に害は無いと分かってはいても突然来られるとやっぱり怖い。

「な、なぁに?」目の下が引きつってしまう。

「おねえちゃんがサキをたすけて、ふたりでカクマさまをふういんしてよ」

 何を言っているんだこの子は。サキを助けるのは元々そのつもりだったからまだ良いとしても、悪霊を封印するだなんて…私はお坊さんじゃないんだから、そんな力あるわけ無いでしょ!?どう返事をしようか考えていると、少年は続けて言う。

「だいじょうぶ。とくべつなちからなんかいらないよ」

 さらっと私の心を読んできた。

「でも、そのお札って試したわけじゃないんでしょ?ちゃんと使えるのかなぁ…」

 第一失敗するとどうなってしまうのか。私も少年と同じように何も無い空間でずっと過ごすの?そんなの無理だ、耐えられない。少年は自分の薄い胸を右手で軽く叩くと、自信満々に話し始める。

ぼくはもともとカクマさまをまつるいえにうまれたっていったでしょ?おばあちゃんがふういんのふだをかいているのをずっとみててさ。いきてるときはかけなかったんだけど、カクマさまがみてないときにれんしゅうして、なんねんもかけてようやくかけるようになったんだ。そういういみでは、カクマさまにはかんしゃしなきゃね」

 確かに、自分の封印を解いた子を操り人形にしたことで、再び封印させる隙を与えることになるとは皮肉なものだ。

「でもおふだができたのはいいけど、ふういんするにはふたりでやらなきゃだめなんだ。ひとりがカクマさまをほこらにいれて、もうひとりがとをしめておふだをはる。だからぼくはサキをもとにもどして、ふたりでカクマさまをふういんしたかったんだ」 

「君がやりたいことは分かったわ。だけど…」

 怖い。失敗した時を考えると…心の底が引き受けることをためらってしまう。

「やるしかないよ。どっちみちカクマさまをなんとかしないとおねえちゃんはこのやまからでれっこないんだから」

「山から出れっこないってそれどういうこと?」

「きのうのよる、カクマさまとあっちゃったでしょ?あれでめつけられちゃったから、このままだとカクマさまがつくるげんかくのやまみちをえいえんにさまよいつづけることになる。いっしょにいたおじさんもね」

 浅山さんまで巻き込んでしまったのか…頭の中が真っ白になりその場で崩れ落ちる。「気を落とすな」と言いたげに少年が冷蔵庫にしまったササミみたいな手で私の頭をポンポン叩いた。

「そういえばかんしゃしてよね。あのときぼくがここにおねえちゃんをつれてこなかったら、カクマさまにのろいころされてたんだから」

 偉そうにふんぞりかえる少年。

「そもそもこの空間になんで私は来れるの?君はここに閉じ込められてるんだよね?」

 話し始めてずいぶん経つけど、私はどうやってここに来たんだ。

「とじこめられてるから、ぼくはここからでることはできないんだけど、はちょうがあうひとをよぶことはできるんだ。みじかいあいだだけだけどね」

「でも昨日に比べると今日はずいぶん長いと思うけど」

きのうはカクマさまからにげるためにむりやりつれてきたからね。ふつうはふかーいねむりについているあいだじゅうはだいじょうぶなはずだから。おねえちゃんとってもつかれてるんだね、からだのほうはぐっすりねむってるよ。しんでるみたいに」

 そう言った少年は再び嫌らしい笑みを浮かべる。

「キミに『死んでるみたい』って、言われたくないよ」

 私は呆れてため息をついた。

「とにかく、たのむよ。おねえちゃんしかもうたよれるひとがいないんだ。サキをたすけられるのも、カクマさまをふういんできるのも、きみしかいない」

「あーもうどうしようかなぁ……」

 頭を抱えて、うずくまる。こんな妙なことになるとは思ってなかった。しかもやらないと永遠に山から出れないだって?じゃあやるしか無いじゃん。でも、怖いなぁ…失敗したら…多分、無期懲役で白い空間閉じ込めの刑でしょ?

「だいじょうぶ。じしんをもってよ」

 頭の上に息がかかる。顔を上げると、仏様みたいな少年の優しい顔が飛び込んできた。

「ぼくとはちょうがあうきみなら、きっとサキをとりもどせる。そしてサキがただしいこころをとりもどせば、ふたりでカクマさまもふういんできる。あとはおねえちゃんがこうどうするかどうかだよ」

 脳裏に、病院でかかってきたサキからの電話の声が蘇る。頼りなくて、か細くて、今にも消えそうな声。年相応の可愛らしい少女の声。

サキはカクマさまにみつかったらどんなおそろしいことになるかわからないのに、ゆうきをだしてきみにたすけをもとめたんだ。そのゆうきにこんどはおねえちゃんがこたえるばんじゃないかな」

 私はギュッと目を閉じ、サキのことを思い浮かべた。公園で遊んだだけのたった1つの思い出だけど、そこにいる彼女はいつも楽しそうに笑っているし、自分も心の底から楽しかったと思っている。どんなに恐ろしい目にあっても、サキのことをもっと知りたいし助けたいという気持ちがあったから私は今ここにいる。そう思い直したらもう迷いはなくなっていた

「……わかった。やれるだけやってみるよ」

 決意が固まった私は目を開けて立ち上がった。心の中は不安でいっぱいだけど、動かないことには何も始まらないからね。

「ありがとう。じゃあこれからおねえちゃんがなにをしなきゃいけないのかをはなすね」

 少年は一瞬嬉しそうな顔をした後、力強い目で見つめてきた。それに答えるように私も無言で頷く。

「まずぼろごやにいって、くまのぬいぐるみをみつけるんだ。みつけたらうしみつどきまでまって、サキにれんらくをいれる。そのときにサキのことをたくさんおもいうかべてね。そうすればきっとサキはこやにあらわれるから、そうしたらサキにぬいぐるみをわたして、もとにもどれーってつよくおもいながら『アマチ・タナヒ・コタマチミセラ・ワ・ロト・イマケ』っていうんだ。きみのおもいがとどけば、これでサキはカクマさまのじゅばくからときはなてるはずさ。ここまではいい?」

「2つ気になることがあるわ。今自分がどこにいるかも分からないのにどうやって小屋まで行けば良いの?それとなにその『あま…ナントカ』って。そんなのいきなり覚えられないよ」

「しんぱいないよ。ぼくのちからをおねえちゃんにわたすから、こやのばしょはくらやみでもかんじることができるし、たましいをかいほうするじゅもんも、あいさつするみたいにすぐにおもいうかぶさ」

「その力って、カクマとは何の関係もないの?」

これはぼくがじりきでみにつけたまもりびととしてのちからだから、カクマさまとはかんけいないよ。あのひとがふういんしたちからは、じぶんがわけあたえたものだけさ」

「わかった。サキを助けたら、次は何をするの?」

「サキのたましいがたべごろになっているから、カクマさまがちかくでみているか、あるいはサキにとりついていっしょにくるとおもうんだ。カクマさまがあらわれたら、サキときょうりょくしてほこらにおいこんでとびらをしめておふだをはる。これですべてかいけつだ」

「簡単そうにいうけど、そんなにうまくいくかな…」

こればっかりはおねえちゃんたちにがんばってもらわないといけないけど、おふだをもっているかぎりカクマさまはおねえちゃんにちかづけないから、それをりようしてうまくおいこんで」

「とりあえず全部わかったわ。ここまできたら、もうやるしかないもんね」

「じゃあぼくのちからをわたすから、りょうてをだして」

 言う通りにすると、両手を握られてひんやりとした感覚が走る。そのまま少年がブツブツと念仏を唱えると少年の体が輝き始め、繋いだ両手から私の体に伝わり、全身に広がると暖かい布団に包まれたような優しい感覚が体中を駆け巡った。

「これで、おねえちゃんはぼくのちからをうけついだ。たとえまっくらでもぼくのからだがもっているおふだがはなつひかりをかんじれば、きっとこやにたどりつけるよ」

「そうなの?特に変わったとは思えないんだけど」

 私は全身を確認し、あまりにも普通なので少年に聞いた。暖かさはもう消えていた。

このくうかんからでたらきっとちがいにびっくりするとおもうよ」

「本当かなぁ…」やっぱりちょっと不安だった。

「さあ、もうじかんがないよ。こうしているあいだにもサキが100にんめのともだちをつくってるかもしれない。すぐにここからでるんだ」

「どうやって?」

「いまからだはねているじょうたいだから、きみにしげきをあたえればこのせかいがくずれておきる」

「刺激ってほっぺをつねるとかそういう…」

「そうそう。だから、ごめんね!」

 突然少年が私のお腹を力強く殴ってきた。そ、そこは呪文とかじゃないのね…。意識が遠のいて視界が霞んでくると、真っ白い空間がガタガタと震え始めて少年の姿もおぼろになっていく。

(たのんだよ、おねえちゃん…サキの…ぼくのたましいを、とりもどして…!!)

 少年の声がする。それは耳のそばでささやくようにも聞こえたし、遠い所から叫ばれたようにも聞こえた。

 吹き抜ける風が頬を叩いて、私は目を覚ます。あたりはすっかり夜になっていて、綺麗な満月が木々の間から覗いている。月が明るいとはいえどこをみても同じような木が立ち並び、自分が今どこにいるかもわからないのに、なぜだか落ち着いている。これが少年が託してくれた力のお陰だろうか?早速言われたとおり『お札が放つ光』とやらを感じてみる。目を閉じてお札のことを思い浮かべると、暗闇の中に白い光がぼんやりと浮かんできた。そのイメージのまま目を開けると、闇が広がる木々の向こうに一筋の光が灯っているのが見える。私はその光を見失わないように気をつけながら、懐中電灯を照らして足下の安全を確認しながら光を目指して歩いた


 30分くらい歩くと今朝発見した神社に出る。小屋に入ると骸骨、つまり少年の遺体が握りしめていた封印の札が力強く光っていた。私は丁寧に骸骨の指を解いてお札を手に入れると、鞄の中に一旦しまう。今まで半信半疑だったけど、これで少年の話が信用できる物だと確信した私は、今度は小屋の奥にあるワラ置き場の中を探り始める。山盛りに積まれたワラを半分ほど崩した所で、茶色の可愛らしい布製の手が出てきた。引っ張りあげると薄汚れてボロボロのくまのぬいぐるみが私の前に姿を現す。長い間山の中で雨風にさらされたせいか土や草や雨の匂いが染み込んでいるが、全体的には30年前の物とは思えないほど可愛らしい作りをしていて、サキが大事にしていたのもなんだか納得できる代物だ。
 お札、そしてぬいぐるみ。2つの重要アイテムを入手する事が出来た私は、丑三つ時、つまり午前2時頃になるまで小屋の中で保存食を食べたりして時間を潰すことにする。スマホを確認すると時刻は午後11時になろうとしていた。決戦の時間まであと3時間。絶対にサキを救って見せる。それだけを考えて私は時間が過ぎるのを待った。

                                         To be continued...